2010 Fiscal Year Annual Research Report
新測定法による海洋底玄武岩を用いた古地磁気強度測定
Project/Area Number |
21840023
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
望月 伸竜 熊本大学, 大学院・先導機構, 特任助教 (60422549)
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Keywords | 地球磁場 / 古地磁気 / 岩石磁気 / 玄武岩 / 古地磁気強度 |
Research Abstract |
今年度は古地磁気強度測定に必要な装置の整備と古地磁気強度実験に必要な精度が得られるかどうかを確認する基礎実験を行い、それらが完了した。また、南部マリアナ背孤拡大軸の海洋底でボーリングにより採取された玄武岩に対して、段階熱消磁を行った。その結果、ブロッキング温度成分は、300℃(低温成分と呼ぶ)と580℃(高温成分)の2種類であることがわかった。それぞれの成分は、玄武岩内部のチタノマグネタイトとマグネタイトが担う残留磁化に対応すると考えられる。いくつかの試料については、低温成分とそれよりも小さい高温成分を示したが、ほとんどの試料は低温成分を保持している。そして、低温成分のみであっても、低温・高温の二成分であっても、残留磁化ベクトルとしては一つの方位を示し、伏角も調査地域の地磁気伏角に近い。これらのことから、少なくとも低温成分については、玄武岩が噴出して冷却する過程で獲得した熱残留磁化(初生磁化)の可能性が高い。したがって、古地磁気強度測定は、初生磁化と考えられるこの低温成分を利用すべきことが明確になった。また、玄武岩試料の反射光顕微鏡観察も行った。その結果、海洋底玄武岩は急冷しているためにチタノマグネタイトは数マイクロメートル程度以下で、陸上の玄武岩に比べて粒子サイズの小さい磁性粒子が明らかに多い。海洋底玄武岩には多数の空隙がみられ、時代の経過ともに空隙に近いチタノマグネタイト粒子から風化(低温酸化)が進行すると考えられる。今後の研究では、FE-SEMなどを利用して、チタノマグネタイト粒子の低温酸化の程度を評価しながら、古地磁気強度測定の結果に与える影響を検証する必要があることが明確になった。
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