2009 Fiscal Year Annual Research Report
カイラル動力学に基づいたエキゾチックなハドロン共鳴状態の研究
Project/Area Number |
21840026
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
兵藤 哲雄 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 特任助教 (60539823)
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Keywords | ハドロン分光学 / カイラル対称性 / 共鳴状態の構造 / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
強い相互作用の理論であるQCD(量子色力学)の基本自由度はクォークとグルーオンであるが、低エネルギーではカラーの閉じ込めが起こるために実際に観測される自由度はハドロンである。ハドロン間の相互作用や動力学はカイラル対称性とその自発的破れによって支配されており、QCDの非摂動的効果によって多彩な現象が観測されている。特にハドロン共鳴状態の内部構造は近年注目を集めており、いかにしてその内部構造を明らかにするのかが精力的に研究されている。本研究ではカイラル対称性に基づく有効理論を用いて動力学的な枠組みを構築し、励起ハドロンの内部構造を調べた。 1:シグマメソンのソフト化の研究 シグマメソンは強い相互作用をする粒子のうちで最もエネルギーの低い共鳴状態であり、標準的なクォーク模型での記述が難しいことから4クォーク状態や2pi分子状態などの構造が提案されてきた。ここでは対称性の破れの部分的回復に伴うスペクトル変化を研究し、内部構造が物理量にあらわれる変化を議論した。結果として、2pi分子状態の場合のスペクトル変化がカイラルパートナーとの議論と定性的に異なることを示し、観測量を通じて構造を調べられる可能性が明らかになった。 2:自然な繰り込み条件と場の繰り込み定数の評価 一般に共鳴状態の構造は2体の分子的状態と裸の状態の重ね合わせで記述される。これまでの研究により、自然な繰り込み条件を用いることで2体の分子的状態成分を取り出すことはできたが、成分の大きさについては定性的な見積もりしかできなかった。本研究では束縛エネルギーが小さい場合には束縛状態の結合定数と場の繰り込み定数との間に成り立つ関係を利用し、分子的成分の定量的な分離の可能性を議論した。結果として、自然な繰り込み条件で得られる状態において分子的成分が支配的であることを明らかにした。
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