2009 Fiscal Year Annual Research Report
単一特性を持つカーボンナノチューブ集合体の電子物性
Project/Area Number |
21840029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 耕充 Nagoya University, 物質科学国際研究センター, 助教 (80547555)
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Keywords | カーボンナノチューブ / 光電子分光 / 電子構造 |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(CNT)は、その擬1次元構造に由来する状態密度の発散、朝永・ラッティンジャー液体(TLL)状態・フォノンの異常なソフト化などの特異な物性が理論的に予測されており、物理的に極めて興味深い研究対象である。しかし、実験的には、特定構造のCNTの電子状態などの基礎的な物性ですらほとんど解明されていない。本研究では、独自に作製した高純度金属型・半導体型CNT集合体を利用し、未解決であったCNTの物性を解明する。初年度は、光電子分光を利用したCNT固体試料における電子物性の研究を中心に行った。具体的には、ドイツの放射光施設であるBessy-IIを利用して測定した炭素原子の1s準位(C1s準位)や荷電子帯の高分解能光電子スペクトルの詳細な解析を行った。興味深いことに、C1s準位は、金属型と半導体型でその結合エネルギーが50meVほど異なることが明らかとなった。また、金属CNTにおいては、一般的な金属材料に特徴的な非対称なピークを示すことがわかった。これらの結果は、グラファイトに代表される炭素材料の結合状態や電子状態に関する基礎的な情報を提供するといえる。また、フェルミレベル近傍の光電子スペクトルでは、金属CNTの束においてTLL状態に特有な状態密度の減少が観測された。このことは、金属CNT束においても、個々のCNT中の電子は三次元的なフェルミ液体では無く、一次元的なTLLとして振舞うことを意味する。上この結果は、特に金属CNTを利用した導電性薄膜の性能限界を考える上で、重要な知見となると考えられる。
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