2010 Fiscal Year Annual Research Report
単一特性を持つカーボンナノチューブ集合体の電子物性
Project/Area Number |
21840029
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮田 耕充 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (80547555)
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Keywords | カーボンナノチューブ / キャリア移動度 / 薄膜トランジスタ |
Research Abstract |
単層カーボンナノチューブ(CNT)は、その擬1次元構造に由来する状態密度の発散、朝永・ラッティンジャー液体(TLL)状態などの特異な物性が理論的に予測されており、物理的に極めて興味深い研究対象であると同時に、その高いキャリア移動度より薄膜トランジスタや透明導電性薄膜などのエレクトロニクス応用が期待されている。しかし、実験的には、特定構造のCNTの電子状態などの基礎的な物性ですらほとんど解明されていない。本研究では、独自に作製した高純度金属型・半導体型CNT集合体を利用し、未解決であったCNT物性の解明を目指した。本年度は、薄膜トランジスタへの応用の観点から近年注目を集めているCNT薄膜の伝導特性について詳細な研究を行った。薄膜の本質的な特性を調べるために、長尺かつ高純度な半導体型CNTを得ることが可能なリサイクルゲルろ過法を新たに開発した。得られた半導体CNTをシリコン基板上で薄膜化し、トランジスタ構造を作製することで電界効果キャリア移動度の評価を行った。作製したデバイスは、室温でのキャリア移動度が160cm^2/Vs、オンオフ電流比が10^6という、従来のCNT薄膜トランジスタを凌駕する特性を示した。この結果は、半導体CNT薄膜の有する高い伝導特性を実証し、高周波デバイス応用を考える上で重要な知見となるといえる。また、国内外の研究グループとの共同研究において、分離された金属型および半導体型CNT試料のX線吸収、光電子分光、ESR、時間分解分光、共鳴ラマン分光等の測定を行った。この結果として、CNTの詳細な電子構造、不純物の影響、励起状態の寿命、キャリアダイナミクスにおける新たな知見が得られた。
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