2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21840031
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大橋 久範 Kyoto University, 数理解析研究所, 特定研究員(グローバルCOE) (40547006)
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Keywords | K3曲面 / 自己同型 / エンリケス曲面 |
Research Abstract |
K3曲面やエンリケス曲面の自己同型を正標数で研究することは非常に有用であり、これにより複素数体上の理論の特殊性を調べ、一般化を試みることができる。例えば、私が複素数体上で証明した「K3曲面を一つ固定すると、これを被覆曲面に持つエンリケス曲面は有限個しかない」という定理は標数2において反例があることが知られている。また、K3曲面の有限シンプレクティック自己同型群の向井氏による分類の正標数への一般化がDolgachev氏とKeum氏によりなされ、非常に興味深い正標数特有の現象が数多く導かれている。これら二つの例に共通するキーワードは「超特異K3曲面」であり、正標数特有の現象である。さて、私は当該年度において、標数11におけるある超特異K3曲面を考え、その楕円ファイバー構造から導かれるMordell-Weil格子がとあるニーマスヤー格子に埋め込まれることを示し、さらにこの関係とbinary Golay符号の性質を利用してこの楕円曲面の整切断の数え上げを行った。この結果は、K3曲面とマシュー群の結び付きの新しい一側面を切り取っているという点でとても意義があると思う。K3曲面の自己同型やモジュライ空間が24次元に関係した特殊な数学的対象を用いて記述できるというテーマは金銅氏らにより深く研究されているが、最近より高い注目を浴びているように思われる。また、Mordell-Weil格子の分類という立場からも、上記の定理には重要性がある。これは、有理曲面のMordell-veil格子にはフレームと呼ばれる外枠があるのに対し、K3曲面に対しては良いフレームが存在するのかしないのかわからなかったという問題点に対し、少なくともある場合にはとても良いフレームがとれることを示した点にある。このように、K3曲面と有限群論との結び付きが一つ示されたことで、エンリケス曲面の場合にはどうかという研究目的に対する一つの示唆が得られたのが、当該年度の成果である。
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