2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21840051
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柳尾 朋洋 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (40444450)
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Keywords | nanlinear dynamics / geometric mechanics / hyperspherical coordinates / atamic cluster / water cluste / chirality / DNA / nucleosome |
Research Abstract |
本研究課題の目的は0高度な秩序構造と機能を有する分子システムの集団運動の仕組みを、非線形力学と幾何学の手法を用いて解明することにある。本年度は、昨年度までの研究成果をふまえて、原子や分子の集合体の集団的な構造変化の力学的機構と速度過程に関する研究を進展させた。さらに、生物のDNAがもつユニークな弾性特性と、DNAの高次構造形成における右・左(キラリティ)の自発的選択のメカニズムを探った。より具体的には以下の通りにまとめられる。 本年度はまず、原子分子集合体の形の対称性と内部エネルギー移動速度との間の一般的な関係を探求した。その結果、系が球対称な質量バランスをもつ構造にある時には、系の内部自由度間の動的結合が強くなり、内部エネルギーの移動が極めて速くなることが分かった。一方、系が非対称な質量バランスを有する時には、内部自由度間の結合は弱く、内部エネルギーの移動は遅くなることが明らかになった。以上の性質から導かれる一般的帰結として、球対称性の高い構造においては、統計的な反応速度式が成り立つ傾向があり、一方非対称な構造においては、統計的な反応速度式が破れる傾向があることが予想される。本結果は、フラーレンなどの高い対称性を有する原子分子集合体の生成・崩壊の機構と速度を探る上で重要であると考えられる。 本年度はさらに、2重らせん構造に由来するDNAのユニークな弾性特性とその生物学的意義を探求した。その結果、DNAにおいては、伸び、曲げ、ねじれ、よじれが非対称に結合するために、DNAが高次構造を形成する際には、自発的に左回りの超らせん構造やよじれ合い構造を選択する性質があることが分かった。この結果は、一般に生体高分子が秩序構造を形成し制御する過程において、右・左(キラリティ)の自発的選択が重要な役割を果たしていることを示唆するものである。
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