2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21840054
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
下川 倫子 摂南大学, 理工学部・基礎理工学機構, 任期つき助教 (80554419)
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Keywords | 粉体 / 相転移 / 輸送 |
Research Abstract |
粉体の相転移現象を理解することを目指し、斜めの斜面に固定した容器に0.1mmのガラスビーズ(科研費にて購入)を入れ、斜面に対して垂直に振動加える実験を行った。この実験で粉体は重力に逆らって、斜めの斜面を登る。これらの現象は粉体の輸送において工学系でも応用されており、よく知られている。今回、粉体の実験を行ったところ、新たに粉体が規則正しい粗密波を形成し、斜面上方に供給される領域が観察され、縞構造が観察される領域を定量的に調べた。粉体が上方に登るための条件を調べた前年度の結果は、振動の振幅が大きく、斜面の角度が小さいほど粉体は登りやすくなることを示す。 昨年度の実験では外力となる振動の方向は鉛直方向にのみであったが、本年度は鉛直方向と水平方向の両方に独立に振動をかけることができる実験装置を構成し、実験を行った。鉛直方向と水平方向の振動数を同値に固定し、振幅のみを変化させたところ、鉛直方向に比べ水平方向の振幅が1/4程度のとき、疎密波が観察される。それ以下では斜面の麓に粉体がたまり、登らない。一方、(水平方向の振幅)/(鉛直方向の振幅)>約1/2では粉体はあたかも水が沸騰するかのように、粉体によるクラスターが形成され、そのクラスターごとに斜面を登る。(水平方向の振幅)/(鉛直方向の振幅)>2の領域ではクラスターさえも観察できず、個々に斜面を登っていく。また、高速度カメラ(科研費にて購入)の観察から、粉同士の衝突による相互作用が縞構造の形成にとって重要であることがわかった。 以上の結果より、(1)水平方向の振動は粉体が上方に登る上で重要な役割を果たしていること、(2)粉体粒子同士の衝突が縞構造の形成にとって重要であることがわかった。粉体は非平衡系での物理現象を再現する最も単純なモデルのひとつといわれていることから、本研究は粉体の相転移現象のみでなく、非平衡系一般における相転移現象の理解にも繋がることが期待される。
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Research Products
(4 results)