2010 Fiscal Year Annual Research Report
極低温共鳴X線散乱による多重極子自由度とその秩序相出現メカニズムの解明
Project/Area Number |
21840059
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
道村 真司 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 博士研究員 (40552310)
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Keywords | X線 / 強相関電子系 / 低温物性 |
Research Abstract |
従来の理論では理解できない"特異な磁気構造,磁気散漫散乱の出現する秩序状態"や"帯磁率,比熱における異常な相転移現象"などの謎を解く鍵として,四極子や八極子などの重極子の自由度が脚光を浴びている。本研究の目的は,その多重極子の秩序メカニズムの解明にある。その手法として共鳴X線散乱法を用いて,多重極子秩序の生成消滅過程を直接観測する。 共鳴X線回折法は、多重極子秩序そのものを直接観測できる唯一の実験手法である。従来,共鳴X線回折により軌道自由度などの秩序変数を同定する場合,一つの回折ピークを捕らえた状態のまま散乱ベクトルの周りで結晶(冷凍機)を回転させ,その強度変化(アジマス角依存性)を測定し,その結果を再現するモデルを立てる。しかし,本研究のように極低温や強磁場といった環境下に試料がある場合,大型の装置を用いる為,「試料と磁場を一緒に回転させる」という操作はまず不可能である。 本研究課題では,試料回転ではなく1.入射X線の偏光制御により,試料を全く動かさずに測定する。さらに2.3Heガス循環型冷凍機及び3.超伝導マグネットを導入することにより,最低温0.5Kでの極低温磁場中実験環境を国内で初めて実現し,極低温,強磁場下での秩序変数の同定を可能にした。本研究課題により整傭されたビームライン(SPinrg-8 BL22XU)は,多重極子の研究に対して,世界屈指の非常に有用な実験環境となった。 昨年度は入射X線の偏光制御の整備及び試験を成功させた。今年度は、冷凍機と超伝導マグネットを導入し、Ce_xLa_<1-x>B_6やRpd_3S_4(R=Pr,Dy)の八極子の秩序変数及び構造を調べた。 1.3Heガス循環型冷凍機2.入射X線の偏光制御3.外部磁場の印加の三点を重点的に調整しつつ,試験的な運用を行った。特にPrPd_3S_4では,入射偏光を変更することにより有用な情報を得ることが出来た。来年度より本格的な実験及び,データの議論を行う。
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