2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21840067
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
柵山 徹也 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部ダイナミクス領域, ポストドクトラル研究員 (80553081)
|
Keywords | 背弧域火成活動 / アルカリ玄武岩 / 東北アジア / 上部マントル融解 / 熱・物質循環プロセス / 沈み込みスラブ / 減圧融解 / 時間空間変化 |
Research Abstract |
前年度サンプリングを行った中国東部山東半島の新古第三紀玄武岩試料、北西九州五島列島福江島玄武岩試料に関して、予定通り一連の分析を終えた。具体的には岩石研磨薄片試料作成・観察・分析(約100枚)、XRF, ICP-MS, TIMSによる主成分元素(約100試料)・微量元素(約100試料)・Sr-Nd-Pb同位体(約30試料)を行った。また新たに山東半島より南部に位置する南京・杭州付近の新古第三紀および第四紀玄武岩試料のサンプリングを行った。採取した岩石試料(約50試料)の岩石研磨薄片試料作成・観察・分析、各種全岩分析を行った。 従来中国東部の玄武岩はほぼ無斑晶質で全岩化学組成が液組成として扱われてきた。しかし、採取した多くの岩石にはキンクバンドを有するカンラン石、反応縁を有する単斜輝石、シンプレクタイト状組織を有する結晶集合体を10vol%以上有する試料が多数存在し、マグマの分別プロセスは従来考えられていたよりも複雑であることが分かった。このことは単純な分別プロセスを仮定して見積もった中国東部全体のマントル温度分布に関しても、再考が必要であることを意味する。一方、ある特定の岩石系列に属する岩石のSr-Nd-Pb同位体組成は時代・場所によらず比較的均質な組成を有することが新たに分かった。そしてその岩石の分布と深さ660kmに停滞する沈み込んだスラブの分布が比較的よい相関を示すことを新たに明らかにした。それらの成果の一つは国際誌へ投稿する最終段階にある。 スラブの沈み込みによる地球の全マントル内での物質循環を考える上で、背弧域における熱・物質循環過程はほとんど明らかにされていない。本研究はその課題に関してマグマ組成の時間・空間分布から一つの解を与えることができると考えられる。
|