2010 Fiscal Year Annual Research Report
ガウス基底・フーリエ変換法に基づいた第一原理分子動力学法の研究
Project/Area Number |
21850002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島崎 智実 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教 (40551544)
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Keywords | GFT法 / DFT / 第一原理 / ab-initio / ガウス基底 / フーリエ変換 / 凝集系 / 分子動力学 |
Research Abstract |
本研究では、ガウス基底・フーリエ変換法(以下GFT法と略)を用いた解析微分法の基礎理論を確立する共に、それを実行することができるプログラムを開発し、凝集系の動的側面を第一原理分子動力学法を用いて調べることを目標としている。GFT法は研究代表者が提案している手法であり、固体や凝集系の第一原理電子状態計算を特に効率的に行うことができる手法である。前年度では、GFT法のための解析微分法の基礎理論の導出を行いプログラムに実装した。本年度は、開発したプログラムを運用しながら、デバッグおよびテスト計算を通してプログラムの完成度を上げることに努めた。GFT法はガウス基底に基づいていることから、GaussianやGAMESSなどの一般的に使用される量子化学プログラムとの互換性に優れている。これらの特性を生かしながらプログラムのチューニングを行った。さらに、Open-MPおよびMPIを用いた混合並列化プログラミングを行い、大規模なシミュレーションが実行できるようにプログラムを改良した。また、東京大学物性研究所のスパコン上で性能が発揮できるようにプログラムのチューニングを行った。開発した大規模計算対応のプログラムを用いて、常温常圧のバルク水のシミュレーションを行い、動径分布関数(RDF)を求めた。計算により求めたRDFは実験結果から得られるRDFと比べて最近接0-0間のピークが過大評価される。この計算結果は、シミュレーションによって得られる水の構造が実験と比べて硬いことを意味している。この原因は基底の不完全さやカットオフ、偽ポテンシャルやDFT汎関数等の計算条件が影響している可能性はあるものの、水素の量子効果が強く影響していると考えられる。そこで、本研究では目的としている大規模な凝集系を充分な物理的・化学的精度を持って実行するために、水素の量子効果を効率的に扱うための手法を開発した。
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