2009 Fiscal Year Annual Research Report
環状ジスルフィドの自己組織化による分子鎖末端を持たない単分子膜の形成
Project/Area Number |
21850013
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 拓矢 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 助教 (30525986)
|
Keywords | 表面・界面物性 / 自己組織化 / 超薄膜 / 構造・機能材料 / トポロジー |
Research Abstract |
本研究の目的は、分子鎖末端を持たない環状分子の自己組織化単分子膜(SAM)形成に立脚した新規機能性材料の開発である。環状アルカンジスルフィドおよびペルフルオロアルカン部位を持つ環状ジスルフィドのSAMを金蒸着膜上に形成すると、その表面には末端官能基(-CH3や-CF3)が存在しないため、一級炭素で起こりやすい脱プロトンおよび脱フッ素反応を防ぎ、高分子材料に匹敵する安定な表面が構築できると考えられる。これらのSAMの構造・物性評価を行い、直鎖構造を持つジスルフィドSAMと比較の上、特性を検証する。特に、フッ素化された環状ジスルフィドのSAMは、フッ素樹脂と同等かそれ以上の撥水性・撥油性や耐薬品性を示す可能性があり、しかも単分子膜として構築できるために電子工学材料に代表される機能性材料への応用が強く期待できる。 これまでの実験ではC10、C20の環状分子およびそれぞれに対応するC5、C10の直鎖状分子を合成した。今後、これらのジスルフィドを用いて、金蒸着膜に対し、SAMを構築する。その評価としてX線回折を用いた結晶構造の解析、IRによる分子鎖のパッキング、Ellipsometryによる膜厚測定、XPSによる元素分析、そして接触角測定による疎水性の評価および表面自由エネルギーの測定を行う予定である。その結果として、環状・直鎖状といった分子トポロジーの違いから生まれる分子鎖末端を全く持たないSAM表面と分子鎖末端のみが形成するSAM表面とでは大きな違いが現れると考えられる。さらに、n-butyl lithium溶液をそれぞれのSAMに接触させ、表面の耐薬品性の評価を行う。n-butyl lithiumは一級カルボアニオンを発生するため、末端官能基(-CH3)が形成するSAMに対して使用した場合、プロトン引き抜きによってアニオン種がSAM表面へ移動し、結果、膜の劣化が進行すると考えられる。しかし、内部官能基(-CH2-)が表面に位置するSAMでは、この反応は起こらず、SAM表面は浸食されないと期待できる。
|