2009 Fiscal Year Annual Research Report
膜中のコレステロールの動態と溶媒和に関する実験的および理論的解析
Project/Area Number |
21850021
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉田 健 The University of Tokushima, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (80549171)
|
Keywords | 脂質膜 / コレステロール / 溶液NMR / MDシミュレーション / 動的溶媒和殻モデル |
Research Abstract |
本年度は、コレステロールを含むモデル膜中での分子の拡散係数の溶液NMR法観測、および実験的に得られるダイナミクス量に対応する距離情報・ダイナミクス情報のMDシミュレーションによる計算の研究を行った。溶液NMR観測に関しては、脂質膜に水和した水のダイナミクス測定を行った。脂質膜の親水基付近のダイナミクスは、薬剤をはじめとした様々な物質の膜透過との関連で重要である。脂質膜近傍の水のダイナミクスとして興味深い回転ダイナミクスは、局所的な相互作用の影響を受けて水素結合の影響を反映するため興味深い。水-水間や水-脂質問の相互作用のダイナミクスに与える影響を考察するため、本研究では温度効果に注目した。温度が上昇し、水素結合をはじめとした引力的相互作用の効果が分子運動に対して相対的に弱まることが水和水の回転ダイナミクスにどのように影響するかを30-70℃の範囲でNMR緩和測定により観測した。本研究では、DPCのミセル溶液中の水和水とバルク溶媒の回転緩和時間が、温度が上がるにつれて共に小さくなることを見出した。さらに、水和水とバルク溶媒の回転緩和時間の比を取ると、常温の30℃では水和水が約2倍であるのに対し、温度が上昇するにつれて比はほぼ1に近づいた。すなわち、常温付近では、脂質の近傍では水の回転緩和が遅くなっているが、温度上昇により、脂質の近傍とバルクでの回転ダイナミクスの差異が見られなくなったことを示す。コレステロールを含む系について関しては、動的物理量のコレステロール含有度に対する応答の実験誤差を検討中である。動的溶媒和殻モデルにもとづくMD法を用いた理論的考察に関しては、以前の超臨界流体に用いた解析プログラムを、脂質膜の系への適用が可能となるように整備を行った。
|
Research Products
(6 results)