2009 Fiscal Year Annual Research Report
新規「電子・核量子分子動力学法」の開発とプロトン移動反応への応用
Project/Area Number |
21850022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
石元 孝佳 Kyushu University, 稲盛フロンティア研究センター, 特任助教 (50543435)
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Keywords | 計算化学 / プロトン移動 / 量子効果 / H / D同位体効 / 分子動力学 |
Research Abstract |
原子核(プロトン)の量子効果の顕な取り込みを可能とするための新規分子シミュレーション手法を開発するために、本研究では、A.新規「電子・核量子分子動力学法」の開発、B.開発手法の有効性の検証と応用計算の課題に取り組む。研究初年度である本年度は、A.新規「電子・核量子分子動力学法」の開発を中心に実施した。今回開発した電子・核分子動力学法は、非経験的分子軌道計算として、多成分分子軌道(MC_MO)法を採用した。従来のBorn-Oppenheimer流の断熱近似(電子と原子)ではなく、MC_MO法を利用することで、任意の基準で相対的に軽い粒子(例えば電子とプロトン)と重い粒子(プロトン以外の原子核)とに断熱近似し、任意の粒子の量子効果の直接的な取り込みを実現した。今回は、水素・重水素置換に伴う同意対抗の詳細な解析のため、プロトンに加えて重水素原子(デュートロン)の量子効果の取り扱いを可能にした。本申請で開発した電子・核量子分子動力学法では、MC_MO法で重い粒子として取り扱われた原子核に対しては、Velret法により、実時間発展を計算した。MC_MO法とMD計算を繰り返すことで、プロトンの量子効果と電子のカップリングを同時に考慮可能な新規計算手法を開発した。開発手法では、プロトンの基底関数に含まれる軌道中心と軌道指数の最適化を実現し、プロトンダイナミクスにおける詳細な解析を可能にした。計算対象として、H_3O_2-とD_3O_2-を取り上げ、水素結合部分のプロトンの量子的な振る舞いに対するH/D同位体効果を解析した。ダイナミクスシミュレーションの結果、酸素原子間距離の振動に連動し、水素結合したプロトンは、波動関数の収縮を繰り返した。このように、骨格構造の変化を含めたプロトン-電子カップリングに対する詳細な解析が本手法により可能となった。
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Research Products
(3 results)