2009 Fiscal Year Annual Research Report
オリゴ糖鎖ナノクラスターの精密構築と生体分子認識機構の解明
Project/Area Number |
21850029
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山口 拓実 Institute for Molecular Science, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (60522430)
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Keywords | 糖鎖 / 糖鎖集積 / NMR / 分子認識 / 配位結合 |
Research Abstract |
糖鎖クラスターを分子認識場として生じるタンパク質やペプチドなどの生体高分子との相互作用は、一つ一つの糖鎖の機能の単なる足し合わせとは異なる、クラスターならではの性質である。本研究では、このような糖鎖クラスターの機能メカニズムを明らかにすることを目的とし、生体内で重要な役割を果たすオリゴ糖鎖クラスターの精密構築を行う。これによりNMR計測を中心とした詳細な解析を可能とし、糖鎖クラスターが発現する特異な生体分子認識機構を明らかにする。平成21年度では、糖脂質GM1を集積した小型バイセルを構築した。糖鎖クラスターのNMR解析を行うためには、効果的に機能を発現する集積形態と、NMR解析に適したナノサイズを両立する必要がある。そこで、ディスク状の二重膜構造を有し、かつサイズ制御が可能なバイセルに着目し、神経細胞膜上に多く存在するGM1ガングリオシドを、バイセルの構成分子として組み込むことを試みた。最適化した条件のもと、GM1とリン脂質DMPC及びDHPCを混合することで試料を調製し、各種NMR測定によってGM1がバイセルに組み込まれていることを確認した。また構成成分の混合比率を変化させることで、GM1含有バイセルのサイズを制御することに成功した。一方、糖鎖の還元末端へ金属イオン結合部位を導入する手法の開発を行った。糖鎖はNOEによる距離情報の取得が困難であり、そのNMR解析はこれまで十分になされていない。この問題を解決するために、ランタニドイオンを用いた常磁性タグを糖鎖へ導入した。はじめに、N型糖鎖のコア構造であるジアセチルキトビオースの還元末端を選択的にアミノ化し、そこへ新規に合成したEDTA誘導体を連結した。こうして得た試料へ常磁性金属を添加することで、金属イオンを効率的に所定の位置へ導入することができた。さらに各種NMR解析を行った結果、常磁性効果を応用することで水溶液中の糖鎖の立体構造情報が得られることを見出した。
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