2010 Fiscal Year Annual Research Report
オリゴ糖鎖ナノクラスターの精密構築と生体分子認識機構の解明
Project/Area Number |
21850029
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山口 拓実 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (60522430)
|
Keywords | 糖鎖 / 糖鎖集積 / NMR / 分子認識 / 配位結合 |
Research Abstract |
生体内では、クラスターを形成したオリゴ糖鎖が、細胞間接着やシグナル伝達などの重要な機能を担っている。ところがオリゴ糖鎖の多くは複雑で多様な構造をしており、人工系において精密な糖鎖クラスターを構築することは困難であった。そのため既存の研究ではNMR法が適用できず、糖鎖集積体の性質を巨視的に調査するにとどまっていた。これに対し本研究では、効果的に機能を発現する集積形態と、ナノスケールのサイズを両立した糖鎖クラスターを構築し、そのNMR解析を行った。平成22年度では、はじめに、常磁性NMRを応用した糖鎖の構造解析法を確立した。ランタニドイオンを配位させたジアセチルキトビオースの^1H-^<_13>C HSQC測定を行い、常磁性効果によるNMRスペクトルの変化を定量的に観測することに成功した。分子動力学計算により求めた糖鎖の安定構造をもとに実験値と計算値を比較した結果、両者は非常に良い一致を示した。続いて、糖鎖クラスターの構造および集合様式を解き明かすことを目指し、糖脂質含有バイセルのNMR解析を行った。前年度に確立した手法に基づき、神経細胞膜上に存在する糖脂質であるガングリオシドGM1、GM2、およびGM3を組込んだ小型バイセルを新たに調製した。これらのガングリオシドはいずれも単独では水中で巨大なミセルを形成するため、通常はNMRによる観測は不可能である。そこでバイセルへ含有させることでサイズの制御を可能とし、糖鎖クラスター由来のNMRシグナルを明瞭に観測することに成功した。さらに、各種二次元NMR測定を駆使し、各ガングリオシドのスペクトル帰属を達成した。またGM1クラスターと特異的に結合し凝集することが知られているアミロイドβペプチド(Aβ)との相互作用を調べた結果、GM1を集積したバイセルが顕著にAβの凝集を誘起することを明らかにした。
|