2010 Fiscal Year Annual Research Report
バルクナノ結晶粒材料の引張変形挙動に及ぼす粒界方位差、粒径分布、転位密度の影響
Project/Area Number |
21860010
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
紙川 尚也 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30530894)
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Keywords | 超微細粒材料 / 超強加工 / 力学特性 |
Research Abstract |
本研究では、超強加工により作製された超微細粒材料の引張変形挙動に及ぼす粒界方位差の影響を詳細に明らかにすることを目的として実験を行った。圧延と繰り返し重ね接合圧延(accumulative roll-bonding)により種々のひずみ量までの加工を施した99.99%純アルミニウムに対して焼鈍を施し、種々の結晶粒径、粒界方位差を有する試料を作製した。平均結晶粒径が約10μm以上の粗大粒材料に対して引張試験を行ったところ、通常の連続降伏挙動を示し、それらの降伏応力は、結晶粒界の方位差分布に依存せず、同一のHall-Petch曲線で整理することができた。一方で、主に大角粒界から成る平均粒径10μm以下の微細粒材料は、降伏点降下現象を伴う不連続降伏を示し、それらの降伏応力は粗大粒材料のHall-Petch曲線の外挿から予測される強度に比べて非常に高い値を示した。それに対して、主に小角粒界から成る微細サブグレイン材料の引張試験においては、降伏点降下現象は見られず、同程度の粒径を有する超微細粒材料に比べて低い降伏強度を示した。これらの結果は、大角粒界および小角粒界の強化機構が、結晶粒径に依存して変化することを意味している。超微細粒材料では、焼鈍時に大角粒界における転位の消滅が促進されていることや、超微細粒内での転位源の活性化が困難になっていることなどから、組織中の初期可動転位密度が低くなっているため、転位源枯渇強化により、高い降伏応力を示したと考えられる。それに対して、サブグレイン材料では、サブグレイン境界を構成する転位が転位源となって容易に降伏している可能性がある。一方、粗大粒材料では、粒内の転位源が容易に活動する結果、降伏応力に粒界の方位差依存性が認められなかったものと理解できる。
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