2010 Fiscal Year Annual Research Report
人工ナノ構造による局在電磁場を用いた多重極遷移の制御
Project/Area Number |
21860014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小西 邦昭 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任助教 (60543072)
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Keywords | 光物性物理学 / プラズモニクス / 多重極遷移 / ナノ構造 |
Research Abstract |
本研究は、金属人工ナノ構造によって形成される急峻な電場勾配を利用した物質中における多重極遷移確率の増大を実験的に検証することを当初の目的とした。昨年度は、人工ナノ構造の基本的な作製環境を整えるとともに、電気双極子以外の多重極効果という点において共通するナノ構造の光学活性を用いた光波制御という点において、人工キラル構造を用いた自然放出制御の実験を検討した。その結果、ナノ構造作製手法を駆使し、半導体で人工キラルナノ周期構造を作製すれば、通常の双極子遷移とは異なる、角運動量を付与された自然放出、すなわち円偏光発光が可能になる可能性を見出した。円偏光状態の光は、スピントロニクス,量子情報やバイオ分野での応用等が期待されており、それを生み出すデバイスを半導体作製技術のみで実現することができれば、応用としてのインパクトも大きいため、本年度はその実現に注力した。具体的には、ガリウム砒素系の半導体を用いて、発光体としてインジウム砒素量子ドットが配置された光導波路の上に卍型の格子が配置された構造、すなわち半導体人工キラル周期構造を作製した。この試料の光励起発光スペクトルの右回り及び左回り円偏光成分を測定したところ、その強度は大きく異なり、観測された円偏光度は最大26%に達した。同時に、数値計算を用いて構造内部の真空場モード分布を算出したところ、予想される円偏光度の大きさは、実験値と良く一致した。これは、本来キラリティーを有しない物質に対して構造のキラリティーを導入することによって、構造内部の円偏光真空場モード密度分布が左右で大きく非対称になった結果、量子ドットからの自然放出が円偏光化していることを示すものであり、新たな人工的な輻射制御手法として重要な成果である。
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