2010 Fiscal Year Annual Research Report
超高速シンチレータ材料の組成最適化とサブナノ秒時間分解X線検出器の完成
Project/Area Number |
21860024
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澁谷 憲悟 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (20415425)
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Keywords | 放射線計測 / X線検出器 / シンチレータ / 励起子 / 多重量子井戸構造 / 結晶化 / 放射光 / メスバウアー |
Research Abstract |
シンチレータとして用いる、有機無機層状ペロブスカイト型化合物の組成最適化を主目的に研究を行った.二価金属については、鉛よりも大きな蛍光強度が得られる二価金属はなかった。次に、主成分を鉛に固定して、微量の二価金属の添加による改良を検討した。アルカリ土類金属と3d遷移金属の計12種類のドーパントの状態密度図を密度汎関数法でシミュレートし、候補金属にコバルトと鉄を選定して、それぞれの化合物を合成した。吸収・発光スペクトルに顕著な変化は見られなかったが、鉄ではマイクロ秒の長寿命成分(アフターグロー)がなくなり、シンチレータとして好ましい性質を確認した。しかし、総発光量が少なく実用性には乏しかった。この原因として、狙い通りにフェルミエネルギー付近の変化が起きたものの、ドーパントに捕獲された励起子がフォノンの関与で無輻射遷移をしている事が考えられる。一方、ハログンに関しては、臭素と沃素の比を、4:0、3:1、2:2、1:3と変えても、それぞれに結晶が得られた。また、沃素の割合が増えるにしたがって、結晶の色は無色透明から黄色へと連続的に変化することが肉眼でも確認できた。沃素の割合が高いほど重原子効果で輻射寿命が短縮されると予想していたが、今回の実験ではその傾向は確認できなかった。また、有機層の成分については、ほとんどのアミンでは従来フェネチルアミンよりも、蛍光強度が低下したが、ある芳香族アミシに関しては200%近い蛍光強度の増大が確認され、有意な改良が行われた。この原因として、有機層から無機層へのエネルギー移動効率の違いと、有機層の空間構造が無機層の空間構造(歪みなど)に与える影響の二通りが考えられる。なお、シンチレーション特性の評価は、高エネルギー加速器研究機構との共同研究により、放射光(X線)で行った。シミュレーションにはCrysta 198を用いた。
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Research Products
(4 results)