2010 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族分子を分散剤に用いた単層カーボンナノチューブ束状凝集体の孤立化分散
Project/Area Number |
21860030
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
村上 陽一 東京工業大学, グローバルエッジ研究院, テニュア・トラック助教 (80526442)
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Keywords | ナノチューブ / ナノ材料 |
Research Abstract |
本年度は,π-π相互作用を利用した単層カーボンナノチューブ(以下,SWNT)の孤立化分散の実現に向け,分散剤の探索と分散の試行を行った.本研究で用いた分散剤は,(i)試薬メーカーから購入した多環芳香族分子,および(ii)学内の有機合成を専門とする共同研究者から提供された独自開発の芳香族ポリマー,の二種に大別される.試料におけるSWNTの分散度・分散量は光吸収スペクトルの線幅および強度から評価した. 具体的に,(i)としては,フタロシアニン類,ナフタロシアニン類,その類似物であるビタミンB12などの平面的な多環芳香構造をもつ分子を中心に探索を行った.しかしながら,これまで探索した範囲では,SWNTの東状凝集体を解いて高い孤立分散度を達成することは実現できていない.(ii)としては,共同研究者が独自に合成した芳香族ポリマー8種類について試行を行った.これらのポリマーはいずれもポリフルオレンを主鎖として様々な修飾基を付加し,性質(電子ドナー性・アクセプター性)を変化させたものである,そのうちの一種について,ジメチルアセトアミドとトルエンの3:5(重量比)混合溶媒において,均一かつ極めて吸光度の高いゲル状のカーボンナノチューブインクを作製することに成功した.吸光度は1cm長セルで6以上(可視域)であった.このような高濃度インクはSWNTの塗布が想定されるような応用では意義を有する可能性があるものの,SWNTの各遷移に対応する光吸収ピークは依然ブロードであり,束状凝集体を一本一本の程度までには分散できていないことを示唆している. 本研究課題は今後の長期的な研究に向けた研究環境のスタートアップを目的としたものであり,本研究を継続的に遂行できる環境は整えることができた,今後もこれまで得られた知見を基に探索と試行を進めてゆく予定である.
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