Research Abstract |
本研究は二つの課題,<課題1>量十暗号における送受信機の偏光軸の最適な補正方法の解明,<課題2>秘匿通信のための現在広く使われている符号設計法の脆弱性の解明,を行うことになっており,平成21年度は課題2に主に取り組みつつ,課題1を次年度に解決するために,文献等の情報収集を行う予定であった.まず本年度主に行った課題2については,問題解決に向けてある程度進展はあったものの,完全解決には至らなかった.しかしながら,本研究申請時に得られていた関連結果,秘密鍵共有において従来使われていたプロトコル設計方法の脆弱性を,より強い結果に拡張し,それらの結果をまとめて学術雑誌に投稿した.現在,条件付き採録になっている. 課題1についても,本研究申請時に得られていた結果を少し拡張し,そこまでの結果をまとめて学術雑誌に投稿した.現在,査読中である. 本年度は上記二つの課題に加え新たに,ガウス情報源からの秘密鍵共有における公開通信のレートと秘密鍵レートのトレードオフを解明するという課題に取り組み始めた.ガウス情報源からの秘密鍵共有は,近年非常に注目されているガウス変調を利用した連続信号の量子暗号と関連が深く,非常に重要な問題である.ガウス情報源のような連続信号からの秘密鍵共有では,離散情報源からの秘密鍵共有とは異なり,情報源をどのように量子化するかということが非常に重要になる.また,工学的に意味のある問題設定にするには,秘密鍵共有プロトコルで使用する公開通信路のレートに制限を入れ,秘密鍵の生成レートとのトレードオフを議論する必要がある.このトレードオフを解明する問題は従来未解決であったが,本年度は情報源がスカラー信号を発生させる場合にトレードオフを解明した.次年度以降に情報源がベクトル信号を発生させる場合も解明する予定である.
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