2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代初頭の大阪の貸家をめぐる空間・人間・社会的諸関係に関する建築史・都市史研究
Project/Area Number |
21860068
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
深田 智恵子 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特別研究員 (50514957)
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Keywords | 近代 / 大阪 / 都市居住 / 貸家経営 / 家主 / 借家人 |
Research Abstract |
都市の居住形態のなかで、借家は近世から近代を通じ、一貫して高い水準で推移してきた。江戸、京都と並び、三都と称された大阪も、江戸時代中・後期を通して借家の比率が高く、近代にはいってもその傾向は続いた。したがって大阪の居住について考察するとき、借家の実態を解明することは重要な要素であるといえる。本研究は新出資料「井上平兵衛家文書」を基礎資料として、近代大阪の都市居住システムを解明することを目的としている。同文書を所蔵する井上平兵衛家は明治初期より大阪都心部で貸家業を営む一方、区会議員を務めるなど地域行政を担った名望家である。このような井上家の社会的・職業的な特徴から、井上平兵衛家文書には貸家経営に関する膨大な資料(土地売買契約書、貸家賃貸契約書、家賃収入帳、貸家建築請負工事契約書、同仕様書など)、および地域行政に関する資料(区会議事録、選挙、尋常小学校運営に関する記録など)が含まれ、近代大阪の居住システムを解明する絶好の資料といえる。 本研究では「井上平兵衛家文書」を用いて、近代大阪の居住システムを具体的に把握するために、(1)物理的居住環境、(2)貸家経営、(3)借家人、(4)大工・建築業者、(5)貸家をめぐる人間関係・社会関係、(6)近代的変容の6つの指標を設定し、それぞれの局面からの分析を行った。これにより、物理的環境、社会的環境、地域社会構造など、居住をとりまく複数の局面から、総合的に都市の居住システム=貸家を捕らえることが出来た。
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