Research Abstract |
人間の舌は,発声や呼吸といった人間においてきわめて重要な役割を有している.これらの動作は舌独特な複雑な機構によって実現されている.舌の機構には極めて小型の空間に7種類以上の多くの筋肉が入り混じり,また,筋肉の体積自体が変形に大きく関与するといった特徴がある.これまで,人間の発声運動の解明を進めるため,発声系の機械モデル(発声ロボット)を構築する研究を行ってきたが,ハードウェア開発の制約により,剛体リンクを用いた機構で構築を行ってきた.一方,形状記憶合金などの様々なアクチュエータの開発が取り組まれているものの,ヒューマノイドロボットへの応用例は少ない.また,新しいアクチュェータにおいては,使い勝手のよいセンサが十分に開発されていないことが制御が困難である理由でもあった.本研究においては,新しいアクチュエータを用いた舌機構の検討を通じてこの問題を解決することを目的としている.機構の検討においては,電磁石を用いた機構の検討などを行った.また,センサ系に関しては,弾性を有する舌表面変形部への影響を抑えて非接触での計測ができることから,フォトリフレクタを用いた距離センサの開発を行った.フォトリフレクタの設計においては,舌表面の変形により,光軸と反射面の対応関係が一定に保てないため,発光素子を2つの広指向性の受光素子ではさむ形にし,また,5mm以下の近距離領域の計測のために,狭指向性の受光素子対を別途設置した.これらのモジュールを既存の発声ロボットの口蓋部に設置することで7個の計測点を設定し,舌の形状を計測できるようにした.これらを用いて,あらかじめ距離がわかっているブロックと軟素材カバーを用いたロボットの機構の計測値を合わせることで,ロボットの舌機構の形状の再現を行い,音響的特徴からその有効性を確認した.
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