2010 Fiscal Year Annual Research Report
導電性σ結合の3次元ネットワーク化による強結合フォノン超伝導材料の開発
Project/Area Number |
21860093
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
桂 ゆかり 独立行政法人理化学研究所, 高木磁性研究室, 基礎科学特別研究員 (00553760)
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Keywords | 新規超伝導体探索 / 電子状態計算 / ゲルマニウム化合物 |
Research Abstract |
低温で電気抵抗がゼロとなり、さまざまな量子現象を示す超伝導材料は、次世代コンピュータ、医療機器、強力電磁石、核融合炉など多様な応用が期待されており、高特性新規超伝導体の発見によるブレークスルーが強く望まれている。共有結合性物質では、狭い空間領域に電子が局在していることから、共有結合にキャリアを導入できれば、超伝導発現の鍵となる強い電子-フォノン相互作用が期待できる。そこで本研究では、この導電性共有結合ネットワークに着目し、新規超伝導体の探索を行った。前年度に発見したカルシウム・コバルト・ゲルマニウムから成る新規化合物について、カルシウムを他のアルカリ土類元素や希土類元素で置換した物質や、コバルトを鉄やニッケルで置換した物質を探索した。その結果、鉄砒化物超伝導体と類似した遷移金属の正方格子を持つ物質群が多く生成し、第一原理電子状態計算からは、いずれも遷移金属とゲルマニウムからなる2次元または3次元の共有結合バンドが電気伝導を担っていることが示唆された。 さらにこれらの化合物群において、鉄砒化物超伝導体のようなネスティングしたフェルミ面が出現する条件を、結晶構造傾向の詳細な考察と網羅的な電子状態計算から調査したところ、マグネシウム・鉄・ゲルマニウム系、リチウム・コバルト・ゲルマニウム系において、超伝導が発現する可能性が高いことを初めて見出した。鉄砒化物超伝導体は転移温度が高いが、砒素の毒性が問題であることから、砒素を安全なゲルマニウムで置換しても超伝導が発現しうるという本研究結果には大きな意義がある。
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