2010 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期および成体において未分化な神経幹細胞を維持する機構の解明
Project/Area Number |
21870010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川口 大地 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (70549518)
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Keywords | 脳・神経 / 発生・分化 / 神経幹細胞 / 幹細胞ニッチ / Notch |
Research Abstract |
近年、成体脳においても神経幹細胞が存在しニューロンを産生し続けていることが明らかとなった。成体におけるニューロン新生は脳損傷時の修復、さらには記憶や学習にも貢献していると言われており、その重要性からも成体神経幹細胞の分化制御メカニズムに関する研究が活発に行われている。神経幹細胞は成体脳において脳室下帯や海馬歯状回といった限局した領域にのみ存在することから未分化維持ニッチの存在が想定されているがその実体は殆ど不明であった。先行研究により、成体神経幹細胞の未分化維持にはNotchの活性化が重要である事が知られている。そこで本研究ではNotchリガンド発現細胞がNotchの活性化を介して未分化維持ニッチとして機能するかを検討することを目的とした。平成22年度は昨年度に引き続きNotchリガンドDelta-like 1 (D111)のコンディショナルノックアウトマウスの解析を中心に行った。成体神経幹細胞においてD111をコンディショナルノックアウトした結果、脳室下帯においてNotch活性化細胞が顕著に減少したことからD111が神経幹細胞のNotch活性化を担っていることが示唆された。次に1、成体神経幹細胞の数がD111のコンディショナルノックアウトによりどのように変化するのかを検証した。成体神経幹細胞はその細胞周期の遅さからチミジンアナログであるIdUを長期間保持する細胞として同定できるため、IdU長期保持細胞を数えることで成体神経幹細胞の数を評価した。その結果、D111コンディショナルノックアウトマウスの脳室下帯において成体神経幹細胞の数が有為に減少することが明らかとなった。また、これに対応して、分化細胞が増加することも観察された。これらの結果からD111発現細胞が成体神経幹細胞を維持するためのニッチ細胞として機能していることが示唆された。
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