2009 Fiscal Year Annual Research Report
5者系の共進化:アリ植物をめぐる生物間相互作用がもたらした共生系の多様化
Project/Area Number |
21870012
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上田 昇平 Shinshu University, 理学部, 奨励研究員 (30553028)
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Keywords | 東南アジア熱帯雨林 / 生物多様性 / シジミチョウ / タマバエ / 分子系統解析 / 分岐年代推定 |
Research Abstract |
東南アジア熱帯雨林のアリ植物オオバギ属はその共生者(アリ・カイガラムシ)および寄生者(シジミチョウ・タマバエ)と緊密な相互作用を結んでいる.これらの共生・寄生者はオオバギに対し形態的・行動的に特殊化しており,寄主植物との共進化が指摘されていた.本研究の目的は,オオバギ共生系(オオバギ・アリ・カイガラムシ)とそれに適応した寄生者(シジミチョウ・タマバエ)間の共進化の歴史を分子系統解析から明らかにすることである.5者系の共進化解析はこれまで皆無であり,新規性・独創性が高く,新しい成果が期待できる.オオバギ,アリとカイガラムシに関しては分子系統樹を比較した先行研究が行われており,3者は約800万年の間,共生関係を維持し,共多様化してきたことが明らかになっていた.本年度の研究では,オオバギ共生系に特異的に寄生するシジミチョウ類の分子系統樹を作成し,シジミチョウはいつオオバギ共生系に寄生者として参入したのか,および,共生系に参入した後,シジミチョウはどのようなタイミングで種分化を起こしたのかを明らかにした.その結果,オオバギに寄生するシジミチョウの起源年代は約200万年前と推定され,その直後に,迅速な多様化が起きていることが明らかになった.これらの結果は,シジミチョウはすでに種分化したオオバギ系に後から参入した寄生者であること,アリ植物オオバギという新たな寄主に適応することによって,劇的に種分化が促進されたことを示唆している.本研究の成果は,新たな寄主への適応(鍵適応)を獲得した系統群が劇的に多様化したことを示したものであり,熱帯の生物多様性の創出機構に新たな見知を与えた.
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