2010 Fiscal Year Annual Research Report
5者系の共進化:アリ植物をめぐる生物間相互作用がもたらした共生系の多様化
Project/Area Number |
21870012
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
上田 昇平 信州大学, 理学部, 奨励研究員 (30553028)
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Keywords | 東南アジア熱帯雨林 / 生物多様性 / シジミチョウ / タマバエ / カイガラムシ / 分子進化 / 分岐年代推定 / 寄主選好性 |
Research Abstract |
熱帯アジアのアリ植物オオバギ属はその共生者(アリ・カイガラムシ)および寄生者(シジミチョウ・タマバエ)と緊密な相互作用を結んでいる.これらの共生者・寄生者はオオバギに対し形態的・行動的に特殊化しており,寄主植物との共進化が指摘されていた.本研究では,オオバギ共生系(オオバギ・アリ・カイガラムシ)とそれに適応した寄生者(シジミチョウ・タマバエ)間の共進化の歴史を分子系統解析から明らかにすることを目的とする.本年度の研究では,寄生性タマバエ類のmtDNA系統樹と共生性カイガラムシ類の核DNA系統樹を作成した.タマバエのmtDNA系統樹から,オオバギに寄生するタマバエ類は単系統群を形成し,その起源年代は1060万年前であることが明らかになった.この結果は,タマバエ類の起源はオオバギ・アリ・カイガラムシ3者共生の起源よりも古いことを示している.しかし,タマバエ類の単系統性および起源年代を頑健な形で示すためには,さらなる採集および解析が必要となるだろう.カイガラムシの核DNA系統樹は,形態に基づく種分類とよく一致したが,mtDNA系統樹とは一致しなかった.この結果は,mtDNA系統樹ではなく核DNA系統樹が種の系統樹をよく反映していることを示す.また,共生カイガラムシ系統群の中には自由生活型のカイガラムシは含まれていた.この結果は,カイガラムシ類においてオオバギ共生という形質が独立に複数回進化したことを示唆する.さらに,核DNA系統からみると,オオバギ・カイガラムシ間の寄主選好性は高く,アリカイガラムシ間の寄主選好性が低いことが明らかになった.この結果は,カイガラムシの寄主選択の主導権を握るのは.アリでは無くオオバギであることを示唆する.
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