2009 Fiscal Year Annual Research Report
動的核分極法による高感度固体NMRを用いた全長ベータ2mアミロイド繊維の構造解析
Project/Area Number |
21870019
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松木 陽 Osaka University, 蛋白質研究所, 助教 (70551498)
|
Keywords | アミロイド繊維 / β2m / 固体NMR / 動的核分極(DNP)法 / 希薄サンプリング / 時間-周波数領域情報統合分光(SIFT)法 |
Research Abstract |
計画通り試料調製、動的核分極(DNP)法の条件探索、いくつかの多次元固体NMR測定を終えた。β2mの発現精製系は滞り無く確立できたが、繊維伸長とNMR試料管への移送の過程で試行題誤を繰り返し、TFEの添加でより均質な繊維構造が形成される事と、超遠心機を利用した高密度試料の管への移送において試料の乾燥を防ぐ手法を確立したことでスペクトルの質を大きく向上できた。DNP条件はマトリクス中のプロトン濃度、NMRの外部磁場強度、マイクロ波強度、試料温度の適値をそれぞれ独立に探索、決定した。DNP効率の高いラジカル分子の設計のために当初の予定通り数値計算プログラムを開発、実測値に合わせ検証も済ませた。早い段階で比較的能力の高いコンピュータとプログラミング環境を整えることができたのが大きい。これを活用して今後の新規測定も見通しよく進められる。繊維試料のDNP測定は前例がなく手探りの因子が多いので、手始めに従来法でどこまで進められるか確かめるのが安全である。これまでに信号帰属の基礎になる2次元、3次元相関スペクトル6種を観測し終え、帰属作業が進行中である。従来法ではそれぞれに3から14日の積算時間が要り、特に3次元相関は感度が不十分で解析に耐えるスペクトルが得られなかった。これは希薄サンプリング法で改善できるので、当初の計画通り阪大蛋白研の固体NMR装置全てでこれを実行するパルスプログラムとマクロを整備、テストを済ませた。従来法で可能な限り准め、高次元分解など鍵になる測定をDNPによる高感度で押さえる予定である。また原子間力顕微鏡による観測によるとTFEを添加することでβ2mの連なり2-3本によって構成される直径100nm程度の比較的細い原繊維ができているらしい。従ってDNPで増強された分極の繊維への浸透の問題は予想より軽微である可能性があるので、より安価で簡便な検証法を引き続き検討する。
|