2010 Fiscal Year Annual Research Report
動的核分極法による高感度固体NMRを用いた全長ベータ2mアミロイド繊維の構造解析
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21870019
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松木 陽 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (70551498)
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Keywords | アミロイド繊維 / β2m / 固体NMR / 動的核分極(DNP)法 / 希薄サンプリング / 時間-周波数領域情報統合分光(SIFT)法 |
Research Abstract |
1.動的核分極(DNP)法によるNMRの感度向上は試料温度が低いほど劇的に伸びる。今年度は蒸発液体ヘリウム(20K)を使い試料温度30KにおけるDNP測定に成功した。これにより従来の200倍以上の感度が得られた。β2m線維のような巨大分子構造体の解析には大きな助けになる。2.希薄データ測定法によりβ2m線維の多次元分解測定を高速、高感度に行った。これで残基内、残基間相関スペクトルの分解能を向上、より多くの信号を見分けられるようになった。3.信号量を制御するための逆標識体β2mも計画とおり作成、測定した。狙ったアミノ酸だけに標識が入っていない事は線維形成前の単量体β2mの溶液NMRスペクトルから確かめた。信号量は完全標識体の約2/3に抑えられ、これにより手作業でも全残基の60%程度帰属できた。ただし信号の重なり合いは予想以上のもので、帰属の曖昧性を完全には解決できなかった。4.そこでモンテカルローシミュレーションを使って膨大な帰属可能性を調べ尽くす数値プログラムを用い、帰属の信憑性を定量的、客観的に評価する手法を導入した。大分子系の解析では帰属が曖昧になりやすい事実を指摘、これを克服する新たな道筋を示せた。5.線維内でβ2m分子がどう集積しているかを知るため、分子間接触を調べるNHHC測定を予定したが、従来法では分子内接触を示す信号と混同する可能性が指摘され、年度の前半は実行保留にした。これはその後、従来^<15>N標識を導入する分子に^2H標識も加え、[^<15>N,^2H]標識とすることで分子内信号を排除、全体の測定感度も向上できる一石二鳥の新法の考案につながった。6.帰属済みの化学シフト値からはβシートの位置はほぼβ2m単量体時のものと変わらず、線維中でも天然構造の要素は保持されていると考えられた。分子内、分子間距離情報をさらに精査し、β2mの線維中での構造モデルを提案したい。
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Research Products
(4 results)