2010 Fiscal Year Annual Research Report
複製フォークにおける損傷乗り越えDNA合成機構の解析
Project/Area Number |
21870023
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
古郡 麻子 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (90546293)
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Keywords | DNA複製 / DNA修復 / 突然変異 / 大腸菌 |
Research Abstract |
生物が細胞分裂する際、次の世代に遺伝情報を伝えるために、様々なDNAポリメラーゼが協力して染色体DNAを複製している。本研究では、DNA損傷乗り越え合成に働くDNAポリメラーゼに着目し、DNA複製の新たな仕組みを明らかにする事を目的としている。昨年度の研究計画では、まず研究の遂行に必要な野生型および変異型DNAポリメラーゼPol IIIの精製を行い、精製度の高い標品を得た。またこれらの精製したPol IIIと他の複製関連タンパク質因子を用いて、試験管内で複製フォークの再構成を行った。また、この系に更に損傷乗り越え型DNAポリメラーゼであるPol IVを加え、ポリメラーゼスイッチ反応の解析を行った。本年度はさらにこの解析を継続し、複製フォークにおける損傷乗り越え型DNAポリメラーゼの働きについて詳細に調べた。その結果、損傷等でPol IIIが停止していなくても、Pol IVの濃度依存的に複製フォークにおけるポリメラーゼスイッチが起こる事が観察された。また、校正機能欠損型Pol IIIでも同様のポリメラーゼスイッチが検出され、またその際のPol IVの濃度は野生型とほとんど同じであることが明らかとなった。これらの結果から、Pol IVは損傷の有無にかかわらず複製フォークでPol IIIと入れ替わることが可能であり、またPol IVによるボリメラーゼスイッチは、Pol IIIのミスインサーション等による校正機能の働きとは無関係に、主にはその濃度依存的に引き起こされると考えられる。こうした結果から、実際に生体内でも損傷乗り越え型DNAポリメラーゼが損傷非依存的にDNA複製に関わっている可能性が示唆される。損傷乗り越え型DNAホリメラーゼの低い複製忠実度が、突然変異等の遺伝的不安定性の要因の一つになっている可能性も考えられ、大変興味深い結果であると考えられる。
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