2010 Fiscal Year Annual Research Report
分裂酵母ヘテロクロマチンの安定性ならびに制御因子の解析
Project/Area Number |
21870024
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
加藤 太陽 島根大学, 医学部, 助教 (40548418)
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Keywords | ゲノム / 遺伝学 / エピジェネティクス / ヘテロクロマチン / 分裂酵母 |
Research Abstract |
分裂酵母などをモデル生物としたこれまでの研究により、ヘテロクロマチンの構築メカニズムはかなり明らかになってきた。しかし、一度構築したヘテロクロマチンを長期にわたって安定に保つ仕組みについては、未だ不明な点が多い。このため本研究は、遺伝学的な解析が容易な分裂酵母をモデル生物として用い、ヘテロクロマチンの安定性およびその制御因子を明らかにすることを目的としている。本年度はヘテロクロマチンの安定性を保証する因子の順遺伝学的スクリーニングを行った。このスクリーニングでは、始めのうちはヘテロクロマチンが維持されているけれども継代に伴って次第にヘテロクロマチンが壊れていくという表現型を示す変異を多数得た。次に、戻し交配と遺伝学的マッピングによって原因遺伝子を同定した。これらのうち3つの変異はRNAポリメラーゼIIの制御因子をコードする遺伝子にヒットしていた。今回のスクリーニング結果の注目すべき点は、ピストン修飾やRNAi経路に関わる既知因子ではなく、RNAポリメラーゼIIの制御因子がヘテロクロマチンの安定性に関わる因子として見出されたことである。この結果は、ヘテロクロマチンを安定に保つためにはRNAポリメラーゼIIの厳密な制御が必要であることを強く示唆している。今回得られた変異をもつ細胞は、RNAポリメラーゼIIによる不必要な転写を抑えきれないか、あるいは転写と共役して起こるRNAi依存的なヘテロクロマチンの再構築過程に欠陥をもつと考えられる。転写はRNAi依存的ヘテロクロマチンの構築に不可欠であるが、その一方でヘテロクロマチンの不安定化要因にもなりうるのだろう。今後は、今回得られた因子のさらなる解析を行うことで、ヘテロクロマチンの安定性を保証する仕組みの理解が深まると期待される。
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Research Products
(4 results)