2010 Fiscal Year Annual Research Report
河口干潟における炭素循環に関する研究:陸域・海域起源有機物の動態の定量的解析
Project/Area Number |
21870028
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
佐々木 晶子 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教 (10535470)
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Keywords | 生態学 / 炭素循環 / 河口干潟 / 有機物起源 |
Research Abstract |
河口域は河川流域や沿岸域における有機物分解の場として注目されており、物質循環研究が盛んに行われている。様々な環境条件が短期間でダイナミックに変動する河口域では、有機物の供給源や量も季節的に大きく変動していることが予想される。有機物の起源(質)の違いは環境中での動態に影響を与える重要な要因であり、物質循環のメカニズムを解明するためには、それらを考慮した定量的な解析が必要である。 本年度は、河川を介して供給される陸域由来有機物の一つである維管束植物の落葉の挙動に着目し、河口域における落葉分解速度と底生動物による利用状況の解明を目指した。本課題では河川下流域から河口域にかけて広く分布するヨシの落葉を試料として、野外調査を行った。 河口干潟におけるヨシ落葉の重量減少過程を調べた結果、大型底生動物による摂食の影響を排除しても落葉供給150日後には粒径1mm以上の粗粒有機物としての残存率は1割程度にとどまり、供給された落葉が粗粒有機物として河口干潟に滞留する期間は限られているこが示唆された。また、底生動物が侵入可能な処理を施したリターバッグを用いて、落葉だまりに出現する生物相を調査した結果、イソガニ類やヤドカリ類、ヨコエビ類といった甲殻類とウミニナ類が高頻度で確認された。これらの生物を対象に、ヨシ落葉の摂食実験を試みたが、摂食による明瞭な重量・落葉面積の減少は認められず、落葉の重量減少の主な経路はバクテリア類による無機化と、物理的破砕による細粒化であることが示唆された。以上の成果の一部を、第58回日本生態学会大会(2011年3月、札幌)にて発表した。
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