2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21870030
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
畠山 淳 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (90404350)
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Keywords | 脳 / 神経上皮 / イメージング / 境界細胞 / 領域性 / 組織構造 |
Research Abstract |
本研究は、領域性獲得の機構解明を念頭に、時間軸や領域性によるニューロン産生のダイナミクス、脳組織構造の違いをもたらす機構、さらに脳の形作りの機構の解明を目的とする。 本年は、cadherinの変異体を用いることで生まれたばかりのニューロンが神経幹細胞と接着帯を保持する時間を変化させたときの神経分化に対する影響を解析した。マウス大脳皮質をモデルに用いた所、保持する時間が短くなると、神経分化が促進され、早生まれの深層のニューロンが増えた。これは、Notchシグナルによる神経幹細胞の維持が脆弱になったことが原因と考えられる。反対に、保持する時間を長くすると、神経分化が抑制され、遅生まれの浅層ニューロンが増えた。この場合は、Notchシグナルの活性が通常より長く持続したいことが原因と考えられる。この結果は、新生ニューロンが神経幹細胞と接着帯を保持する時間が、神経幹細胞の増殖と分化のバランスを制御していることを強く示唆する。接着帯を保持する時間が異なることで、領域によって異なった増殖と分化のバランスをコントロールできる。その結果、領域による組織構造の違いがうみ出されるのかもしれない。この研究成果は、ほ乳類が層構造をもった大脳皮質を獲得した遺伝的背景の解明や、再生医療への応用に貢献できる。 同一神経幹細胞由来の細胞群を複数、異なる色で識別できるマウスについては、共同研究先の事情で解析するにまで至らなかったが、本研究目的に対して新生ニューロンの振る舞いとその意義の観点から成果をあげることができ、現在論文投稿中である。
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