Research Abstract |
平成21年度に実施した現地流量観測結果に基づき,対象地域内の幹線・支線の用・排水路の主要な地点に自記水位計を設置し,流量を連続観測した.また,平成21年度に継続して,電磁流速計による定期的な流量観測と,水田作業の進行調査も実施した.さらに,国土数値情報,日本水土図鑑のGISデータを用いた配水モデルの構築を進めた.一方,当初は対象地域内の水田数筆を対象に,湛水管理と水田必要水量(減水深)を把握する計画であったが,平成21年度に当グループが別途実施した研究から,既存の減水深測定方法では正確な値を測定できない場合があることが判明した.減水深は計画用水量を決定する際の最も重要な値であり,この測定精度が開発モデルの推定結果に大きく影響する可能性がある.そこで,計画を一部変更し,湛水管理が比較的容易な筑波大学内の実験水田を対象に,既存の減水深測定方法を再検討した. 平成21年度の調査結果と合わせて,配水モデルの基礎データとなる対象地域内での用水管理ならびに水田管理の実態が明らかになった.特に,平成21年度は特徴的な気象条件(春と夏がそれぞれ記録的な低温と高温),平成22年度は平年並であったため,この2年を比較することで気象条件(特に気温)が用水管理と水田管理に及ぼす影響が明らかになった.開発モデルでは,気温は消費水量(蒸発散量)の推定にしか用いていなかったが,気温が用水管理や水田管理に及ぼす影響が明らかになったことから,今後開発モデルにこの影響を加える必要がある.一方,水田減水深については,時期によって測定値にバラツキが生じることが明らかになった.開発モデルでは水田必要水量を決定する際に減水深をパラメータとして用いており,この決定方法についても今後検討が必要であることが明らかになった.さらに,開発モデルへの配水モデルの組み込みを完了し,原著論文として公表した.
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