Research Abstract |
本研究では,ハイパースペクトルセンサーの草地・畜産管理技術への実利用に向けて,特に牧草の品質診断における波長特性の把握と,草量・草質の推定方法の開発を目的としている。初年度は,広島大学附属瀬戸内圏フィールド科学教育研究センター・西条ステーション内のイタリアンライグラス採草地を中心に,携帯型分光放射計MS-720を使用した野外ハイパースペクトル計測と,同地点における1m×1mコドラート枠を使用した地上部刈り取り調査,これら植物体サンプルの化学分析を実施した。また北海道農業研究センター内の放牧草地においても,同様の調査を実施した。 1. 多変量回帰手法における波長選択によって,地上ハイパースペクトル計測からえられたスペクトル情報のうち,マメ科とイネ科の飼料成分含量の差異から,マメ科率の推定に重要な波長がそれぞれ得られた。 2. 遺伝的アルゴリズムを応用した波長選択型Partial Least Squares(PLS)回帰によって,イタリアングラス採草地,混播放牧草地のいずれにおいても草量と窒素(N),粗タンパク質(CP),粗繊維(NDF, ADF)の推定に重要な波長がそれぞれ得られた。また,全課題までの波長選択方法(ステップワイズ重回帰分析,ISE波長選択型PLS回帰など)で得られた波長を使用した回帰分析による推定方法に比べて,その推定精度も向上した。 今後の課題としては,群落構造や光環境の違いがその波長特性に与える影響を明らかにするため,継続して調査を実施する予定にある。
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