2010 Fiscal Year Annual Research Report
全身獲得抵抗性反応におけるサリチル酸シグナル伝達機構の解析
Project/Area Number |
21880033
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Research Institution | Kagawa University |
Principal Investigator |
多田 安臣 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (40552740)
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Keywords | サリチル酸 / 複合体解析 / シロイヌナズナ / 植物病理学 |
Research Abstract |
本年度は、初年度に同定したNPR1-EF-Tu複合体の、誘導抵抗性における役割について特に生化学的に解析した。NPRIは一酸化窒素(NO)を直接認識することにより、ジスルフィド結合を介したオリゴマーを形成するが、細胞内が還元的になるとオリゴマーから活性型のモノマーが遊離する。一方、EF-Tuは、分子シャペロン活性やタンパク質ジスルフィドイソメラーゼ活性を有しており、タンパク質の高次構造の形成に関与することが知られている。 そこで、EF-Tuは、NPR1オリゴマーの形成に関与するかを調査した。その結果、EF-TuとNPR1モノマーをin vitroにおいて反応させると、NPR1のみの場合よりもオリゴマー形成能は抑制されることが明らかになった。これは、EF-TuがNPR1と直接的に相互作用し、NPR1同士の会合を抑制している、或いはNPR1が形成するジスルフィド結合を、EF-Tuが有するレドックス感受性の高いシステインで還元している可能性があげられる。 次に、NPR1オリゴマーの安定性を検討するために、in vitroにおいてNPR1モノマーにNOを処理し、NPR1オリゴマーを誘導した。本サンプルを透析後、EF-Tu及び還元剤であるdithiothreitol(DTT)を加え、NPR1のモノマー化誘導能を検討した。その結果、NPR1オリゴマーにDTTのみを処理したサンプルと比較し、EF-Tuを添加するとNPR1オリゴマーの安定性は極めて良かった。すなわち、EF-Tuのジスルフィドイソメラーゼ活性がNPR1同士のジスルフィド結合の安定性に寄与しているものと考えられた。 上記反応に関し、NPR1自身にも同酵素活性が有る可能性があるので、インスリン還元系を用い、同可能性について検討した。その結果、NPR1は直接インスリンを還元しないが、DTTによるインスリン還元活性を極めて強く抑制することが明らかになった。本活性には少なくともシステインC156が関与することも明らかになった。今後は、EF-TuとNPR1のジスルフィド結合能について当該システイン残基を同定し、そのin vivoでの役割を検討する。
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