2010 Fiscal Year Annual Research Report
エボラウイルスの宿主細胞への侵入機構の分子機構に関する研究
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21890005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
南保 明日香 北海道大学, 大学院・薬学研究院, 講師 (60359487)
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Keywords | エボラウイルス / 宿主因子 / エンドサイトーシス / 感染症 |
Research Abstract |
当該年度において得られた研究成果を以下に示す。 1.エボラウイルス粒子の細胞への取込みに関与する宿主因子の同定 本研究において、エボラウイルス粒子は、ウイルス由来の糖タンパク質GP依存的にマクロピノサイトーシスを介して宿主細胞へ取り込まれることを明らかにした。ウイルス粒子の取込み過程に関与する宿主因子を同定する目的で解析を行い、アクチン重合に関与する上流因子であるRAC1およびCdc42、または下流因子であるPAK1、PI3Kが関与することを明らかにした。また、ウイルス粒子の取込みに伴い、細胞辺縁部のアクチンに富んだラッフリングが生じることを証明した。以上の結果から、これらのアクチン重合関連因子の活性化に引き続いてアクチン再構成が誘導され、ウイルス粒子が効率良く細胞内へ取り込まれる可能性が示された。なお、上記の研究成果はPLoS Pathogens誌に掲載された。 2.エボラウイルスGP分子内のムチン様ドメインの機能解析 GP分子内には糖鎖修飾に富んだムチン様ドメインが存在する。また、エボラウイルスのco-receptorとしてC型レクチンが同定されていることから、GP分子内のムチン様ドメインがC型レクチンと結合することで、マクロピノサイトーシスが誘導され、エボラウイルスの細胞内への取込みが惹起されるというモデルを考えた。これを検証する目的で、ムチン様ドメインを欠失した変異GPを有するウイルス粒子を調整し、宿主細胞への取込み効率を検証した。その結果、野生型GPを持つVLPと比較して取り込み効率が低下していることが明らかとなり、ムチン様ドメインの重要性が示唆された。 今後、本研究を発展させることで、エボラウイルス侵入機構の分子レベルにおける解析が進み、将来的には抗エボラウイルス薬の開発およびエボラウイルスの制圧に多大な貢献を与えることが期待される。
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