Research Abstract |
強力な骨吸収抑制薬であるビスフォスフォネート(BP)は骨ハイドロキシアパタイトに強い親和性を持つため選択的に骨に集積する.骨に結合したBPsは,骨吸収の過程で破骨細胞に取り込まれ,アポトーシスを誘導する事により骨吸収抑制作用を示すと言われている.その強い骨吸収抑制作用は,前立腺癌や乳癌のような骨転移性腫瘍,骨粗鬆症,骨ページェット病,骨形成不全症および多発性骨髄腫などの骨吸収亢進性疾患に広く応用され,現在世界中で2億人の患者に投与されている.しかしながら,'顎骨壊死とそれによる顎骨の露出'という予期せぬ副作用が最近続発し,ここ数年で数千人の発症が報告されている.BPは側鎖にアミノ基を含む窒素含有BP(NBP)と窒素非含有BP(non-NBP)の2種類が存在し,NBPは強力な骨吸収抑制作用を有すが,顎骨壊死の多くはNBPにより発症する.一方,non-NBPの骨吸収抑制作用は微弱であるが,顎骨壊死の報告はほとんどない.私達のこれまでの研究によりNBPの引き起こす炎症・壊死はnon-NBPにより抑制されるという結果を得ている.本研究では顎骨壊死モデルマウスの作製することにより,NBP+non-NBPの併用投与による顎骨壊死の抑制および治療についての効果をモデルマウスにて検討する事が可能となる.しかしながら,マウスの顎骨における骨髄は非常に少なく,未だ成功には至っていないが,顎骨に限らず,他部位での骨壊死モデル作製も目指して行く.また,前立腺癌細胞のPC-3を用いてBPの抗腫瘍作用をNBPおよびnon-NBPの併用投与による効果を検討した.まだこの実験に対して考察の途中であるが,NBP+non-NBPの抗腫瘍作用が明らかにすることにより,NBPとnon-NBPの併用は顎骨壊死の予防に加えて,骨に転移する癌の治療にも応用できることになり,その意義は極めて大きいと考える.
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