2010 Fiscal Year Annual Research Report
新たな創傷感染発症機序の解明に基づくリアルタイムアセスメント指標とケア方法の開発
Project/Area Number |
21890064
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
仲上 豪二朗 東京大学, 大学院・医学系研究科, 講師 (70547827)
|
Keywords | クオラムセンシング / 褥瘡 / 遺伝子発現 |
Research Abstract |
褥瘡などの皮膚創傷は感染を生じると難治化するため、早期治療が重要であるが、細菌感染の病態メカニズムは十分明らかになっていない。昨年度の研究成果より、緑膿菌が遺伝子発現制御に使用しているシグナル分子であるアシルホモセリンラクトン(AHL)が創傷の炎症を惹起することから、AHL自体が宿主の炎症を誘導する可能性が想定された。緑膿菌クオラムセンシングシグナルであるAHLは哺乳細胞の遺伝子発現を変化させることが報告されており、それが創傷感染の一部を担っている可能性があるが、創傷を対象とした検討はほとんどされていない。特に、創傷治癒に関連する蛋白分解酵素であるMMP発現を上昇させることで組織障害を促進することが動物実験より示唆されたがその詳細は不明であった。今回は肉芽組織に多く集積している線維芽細胞に対する影響に着目し解析を行った。ラット線維芽細胞株(Rat-1)に対して、緑膿菌AHL(3-oxo-C12)を作用させ、各種MMPの遺伝子発現をreal-time RT-PCRにて経時的に解析した。また、その作用メカニズムを検討するため種々シグナル伝達経路を検討した。MMP遺伝子発現の解析の結果、MMP3、7、9,13において著明に発現が増加していた。また、それらの発現制御に共通に関わるシグナル伝達経路に着目し解析を行ったところ、AP-1サブユニットであるc-fosおよびc-junにおいて発現が上昇しており、AHLによるMMP発現上昇作用メカニズムであることが示唆された。さらに、AP-1の上流である各種MAPKの関与を検討したところ、ERKおよびp38MAPKを介して1脳Pの発現を上昇させている可能性が示された。以上から、AHLによる宿主MMP発現の上昇が創傷感染の本体の一部を担っている可能性が示され、新たな感染症発症メカニズムの解明につながった。今後この知見を発展させ、新しい創傷感染管理手法の開発につなげたい。
|
Research Products
(5 results)