2010 Fiscal Year Annual Research Report
卵巣癌における、腫瘍の低酸素微小環境がもたらす抗癌剤耐性機構の解明
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21890130
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
林 正美 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00551748)
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Keywords | 卵巣癌 / 抗癌剤耐性 / Akt / mTOR |
Research Abstract |
我々はまず卵巣癌細胞株を用いて、そのパクリタキセル耐性株を作成し、耐性獲得におけるAktの関与について検討した。Aktは細胞増殖の促進やアポトーシスの抑制など、癌の悪性化や進行に重要な影響を及ぼすことが知られている。卵巣癌細胞株での検討の結果、パクリタキセル耐性株でAktとくにAkt2が活性化していることを確認した。 HIF-2αは低酸素下で発現する転写因子で、血管新生促進作用を持ち腫瘍の増大にかかわることが知られている。最近、HIF-2αを高発現している腎淡明細胞腺癌においてAkt2が亢進していること、またAkt2の抑制によりHIF-2α発現が抑制されることが報告され、Akt2とHIF-2αの発現の関連性が示唆された。そこで我々は、卵巣癌細胞株とその抗癌剤耐性株との間で、HIF-2αの発現についても比較検討した。その結果、抗癌剤耐性株においてHIF-2αの発現量増加を認めた。これらの結果は、抗癌剤耐性の難治性卵巣癌に対する、Akt2およびHIF-2αをターゲットとした分子標的治療薬の有効性を示唆するものである。 そこで次に、パクリタキセル耐性卵巣癌における、Akt2をターゲットとした分子標的治療の可能性を検討するため、Akt2 siRNA発現アデノウイルスベクターを作成した。パクリタキセル耐性卵巣癌細胞株を移植したヌードマウスにAkt2 siRNAまたはコントロールsiRNAベクターを投与し腫瘍のサイズを比較したところ、コントロールsiRNA投与群よりもAkt2 siRNA投与群の腫瘍の方が小さく、Akt2が分子標的治療のターゲットとなりうる可能性が示唆された。
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