2009 Fiscal Year Annual Research Report
キラルカルバニオンの立体化学的安定性の評価法の開発
Project/Area Number |
21890151
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
池本 陽峰 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助手 (60549004)
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Keywords | キラルカルバニオン / 立体化学的安定性 / 溶媒効果 / Wittig転位 |
Research Abstract |
本年度はキラルカルバニオンの立体化学的安定性に対する溶媒効果の解明を目的として,以下の検討を行った. 1. 1, 4-dioxane, Et_2O, THFなどのエーテル系溶媒及びtolueneなどの低極性溶媒中で発生させたα-アリロキシベンジルカルバニオンを[2, 3]-Wittig転位反応で捕捉したところ,それぞれの溶媒で生成物の不斉収率が大きく異なる結果が得られた.これは,溶媒の構造やカルバニオンへの配位能の違いによってキラルカルバニオンの立体化学的安定性が大きく変化することを示唆する結果である. 2. キラルカルバニオンの立体化学的安定性を評価するのに汎用されるHoffmannテストを利用し,α-シリルベンジルカルバニオンについて,上記溶媒中における安定性を比較した.1, 4-dioxaneなどの環状エーテル系溶媒を用いた場合,そのカルバニオンは立体化学的に安定であるのに対して,Et_2Oなどの鎖状エーテル系溶媒,tolueneなどの低極性溶媒中では立体化学的に不安定であることが明らかになった. 3. キラルカルバニオンの立体化学的安定性にキレーションが関与している可能性を検証するために,上記溶媒中,キレーションを阻害するHMPA, TMEDAなどを添加して反応を行なった.添加剤の有無によって生成物の不斉収率が大きく異なっていることから,キラルカルバニオンの立体化学的安定性にキレーションが介在していることが示唆された. これまでにキラルカルバニオンの立体化学的安定性に影響を与える溶媒効果についての報告はほとんど存在しないため,これらの知見はカルバニオンの基礎的な性質を示す極めて重要なものであると考えられる.
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