Research Abstract |
本研究は摂食障害患者を対象に認知課題遂行時の脳活動を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて検討し,摂食障害に特徴的な認知基盤を明らかにすることを目的としている.女性摂食障害患者及び健常若年女性を対象に,MRI装置を用いて身体画像刺激の認知課題遂行中の脳活動を連続的に撮像した.課題では,被験者のデジタル写真を横軸方向へ,±25%拡大縮小した画像を作成し,被験者自身の実際の画像と2つ並べて提示し,その組み合わせにより,3つのTaskを被験者に課す.Fat Taskは肥満画像と自己画像を並べ,Thin Taskはやせ画像と自己画像を並べて呈示し,不快な画像を選ぶ.Control Taskは自己画像を二つ並べて呈示し,十字印がついている画像を選ぶ.測定された脳機能画像は解析ソフトSPM5を用いて個人解析した後に,グループ解析を行い,Fat Task, Thin Task遂行中にControl Task遂行中と比較して有意に活動が上昇した脳領域を検出した.Fat Task遂行中に,Control Task遂行中と比較して有意な信号の上昇を認めた脳部位は,AN-R群では扁桃体,AN-BP群では扁桃体及び前頭前野,BN群では後頭葉,健常群では扁桃体及び前頭前野であった.Thin Taskにおいては,グループ間で有意な脳活動の差を認めなかった. 今回の結果から自己の身体イメージの変化に対し,摂食障害患者では,前頭前野や扁桃体,後頭葉が重要な役割を果たしており,また病型により神経的認知スタイルが異なると考えられた.本研究により,摂食障害の症状形成は,自己の身体イメージの変化に対する脳の反応パターンと関連することを示しているものと考えられた.研究の進展に伴い,摂食障害の治療効果判定や発症予防につながる知見が得られることを期待している.
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