2010 Fiscal Year Annual Research Report
制御性肝類洞内皮細胞を用いた直接及び間接認識T細胞性拒絶の同時制御法の開発
Project/Area Number |
21890155
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
尾上 隆司 広島大学, 病院, 病院助教 (90549809)
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Keywords | 肝移植 / 免疫寛容 / 移植免疫 / 類洞内皮細胞 / キメラ / PD-L1 |
Research Abstract |
肝臓は各臓器移植の中でも生着しやすい臓器として知られているが、メカニズムのひとつに肝類洞を構成する類洞内皮細胞による循環免疫細胞の寛容化が挙げられる。これまでマウス肝類洞内皮細胞によって抗原提示されたT細胞は直接および間接認識経路で死滅あるいは麻痺に陥り、移植抗原特異的免疫寛容が誘導されることを示してきた。21年度の研究では、肝臓移植の際摘出されたレシピエントの肝臓から類洞内皮細胞を分離し、移植後の肝臓に門脈投与することでキメラ類洞内皮細胞を構築し、両経路で抗原提示するT細胞を共に寛容化する可能性を検討した。同種異系マウス間で、免疫不全マウス(Rag2/γ-chain^<-/->B6マウス)に類洞内皮細胞を門脈内移入し、4週後にB6マウスから同系骨髄移植にて免疫再構築を行った。類洞内皮の門脈移入を行うと、MHC class I染色によって類洞内皮細胞のキメラ構築が確認できた。さらに生着したキメラ内皮はPD-L1を強く表出していた。免疫再構築後、キメラ内皮が誘導できた個体では、アロ反応性T細胞の応答が有意に抑制されていた。しかし抗PD-L1抗体の投与によりこの特異的T細胞応答抑制効果は消失し、PD-L1により免疫寛容が誘導されていることが示唆された。本年度は前年度に確立したキメラ肝マウスに対するアロ心移植モデルを用いたin vivoでの検討を行った。免疫再構築後のキメラ肝マウスに対して、移入した類洞内皮細胞と同系マウスをドナーとしたアロ心移植を行った。キメラ化していないマウスでは移植後14日までに全例拒絶されたのに対し、キメラ肝マウスではグラフト心生着が有意に延長した。このグラフト心生着延長効果はドナー類洞特異的であった。これらの結果より、アロ類洞内皮移入によるキメラ肝により移植臓器に対する免疫寛容誘導が可能であることが明らかとなった。
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