2009 Fiscal Year Annual Research Report
リン酸代謝を分子基盤とした歯の石灰化不全の解析と実験的治療
Project/Area Number |
21890156
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉岡 広陽 Hiroshima University, 大学院・医歯薬学総合研究科, 助教 (50523411)
|
Keywords | リン酸代謝 / 石灰化 / 歯 / エナメル質 |
Research Abstract |
近年,無機リン酸(Pi)がシグナル分子として機能し,Pi代謝調節因子と協調して,歯や骨における細胞の分化や石灰化に関与していることが明らかになっている。本研究は,歯の形成,特にエナメル芽細胞,象牙芽細胞の分化および石灰化におけるIII型ナトリウム依存性リン酸(Na/Pi)トランスポーターPit1の役割を解明することを目的とする。本年度はPit1を過剰発現するトランスジェニック(Pit1-Tg)ラットに認められる下顎切歯の形成障害を組織化学的に精査した。まず,非脱灰標本を作製し,マイクロCTおよび電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用い石灰化度を分析した。その結果,エナメル質の石灰化遅延およびエナメル質表層のカルシウム濃度の減少が観察され,石灰化不全を認めた。次に,脱灰標本を作製し,H-E染色を行い,光学顕微鏡にて観察を行った。その結果,エナメル芽細胞を含むエナメル器の細胞は分泌期に至るまで正常な形態を示したが,成熟期ではエナメル芽細胞の極性が失われ,上皮様の配列の乱れが認められた。Pit1-Tgラットは加齢とともに高リン血症などミネラル代謝異常を発症するが,発症前の生後4週齢より歯の異常が認められることから,全身性のPi代謝ではなく,歯局所でのPit1によるPiの過剰な取り込みが歯の形成(石灰化)に影響を及ぼしていると考察された。この他本年度は,歯胚の器官培養系を確立した。来年度には,歯胚培養によるex vivoでの解析から,全身性のPi代謝によらない歯牙組織局所でのPit1の役割やPi代謝調節を明らかにできると見込んでいる。
|