2010 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍内浸潤免疫系細胞の細胞動態を指標にした口腔癌に対するオーダーメイド治療の開発
Project/Area Number |
21890157
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
竹末 奈七子 広島大学, 病院, 歯科診療医 (70548982)
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Keywords | メモリーT細胞 / hnRNPLL |
Research Abstract |
前年度までの報告で、浸潤免疫系細胞密度が高いほど,無病生存率も高いことが明らかとなった。Stage IやII症例であっても,CD45RO発現が低い症例の無病生存率は低下していた。一方,stage IV症例であっても,CD45ROの高発現症例では高い無病生存率を示した。口腔扁平上皮癌組織において,腫瘍細胞によるMICAの発現と,腫瘍内浸潤免疫細胞の浸潤密度は正の相関関係がある事が示された。特にCD45RO陽性メモリーT細胞の浸潤動態は,口腔扁平上皮癌の再発,無病生存率および生存率と有意に相関していたことから,MICAおよびCD45RO分子は,口腔扁平上皮癌の腫瘍免疫において重要な機能を果たしているとともに,口腔扁平上皮癌の予後予測因子として非常に有用であることが示された。 メモリーT細胞の表出するCD45分子の選択的スプライシングにおいて,ヘテロ核リボ核蛋白質L様分子(hnRNPLL)が誘導性制御因子として機能している可能性が報告されている。刺激を受けたT細胞では,hnRNPLLの発現量が上昇する。またhnRNPLLの発現を抑制するとCD45RAの発現量は上昇し,CD45RO発現量は低下すること,一方hnRNPLLの過剰発現で,CD45RAの発現量は低下し,CD45RO発現量は高くなることが報告されている。実際OSCC組織由来RNAを用い,リアルタイム定量PCR法にてhnRNPLLの発現を検討した結果,CD45RO遺伝子発現量と正の相関関係(P<0.01)を認めた。したがって,hnRNPLLの発現を制御することによりメモリーCD8^+T細胞の分化維持促進を制御することが可能ではないかと考えられた。さらに本分子の制御は先に述べたようなメモリーT細胞を用いた免疫細胞治療を行う際に,移入細胞の活性を腫瘍組織内で長期間維持させるためにも有用と考えられた。
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