2009 Fiscal Year Annual Research Report
金属による呼吸器炎症発生機序の究明とエピジェネティック制御の関与の検討
Project/Area Number |
21890174
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
栄徳 勝光 Kochi University, 教育研究部・医療学系, 助教 (50552733)
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Keywords | インジウム化合物 / 産業医学 / エピジェネティクス / 酸化ストレス / 呼吸器炎症 |
Research Abstract |
昨年度に実施した研究によって、アカタラセミアマウスと野生型マウスの間で、酸化インジウム(In_2O_3)の投与による体重増加の抑制、肺相対重量増加、肺組織の変化に有為な差が認められた。野生型、アカタラセミアマウス共にIn_2O_3の投与により体重増加が抑制されたが、アカタラセミアマウスの方がより少量で体重増加の抑制が引き起こされた。また、In_2O_3の投与により肺相対重量が増加したが、アカタラセミアマウスの方が増加の割合がより大きかった。さらに、肺組織標本を観察した結果も、アカタラセミアマウスのIn_2O_3投与群でより重度な障害を示した。 遺伝子操作技術や遺伝子改変体が充実したマウスにおいて、In_2O_3気管内投与による肺傷害導入系が確立したことは、インジウム(In)化合物による肺疾患発症機構を解明するために有効な手段を獲得したとみなすことができる。また、カタラーゼ活性の欠損によりIn_2O_3への感受性が増加したことから、研究計画段階での予想通りIn_2O_3による肺疾患発症機序への酸化ストレスの関与が示唆された。 In_2O_3は電子機器のフラットパネルディスプレイの材料であり、世界のIn消費の大半を占める我が国において高い産業的価値を有している。ここ十数年にかけて国内のIn需要も約6倍増加しているが、その流れの中でIn_2O_3曝露による健康阻害の実例が報告されだした。作業環境中の許容濃度が引き下げられたことにより、高濃度曝露による人体への影響は今後抑えられると考えられるものの、まだ明らかにされていない低濃度暴露の影響を検討することが喫緊の課題となっている。 これまでの研究は様々なIn化合物の毒性検査が主体であったが、今回遺伝子変異マウスを用いて、酸化ストレスと肺障害の関係性を示唆する結果が得られたことにより、今後の診断法、治療法を考える上で重要な手がかりを得ることができたといえる。
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