2010 Fiscal Year Annual Research Report
金属による呼吸器炎症発生機序の究明とエピジェネティック制御の関与の検討
Project/Area Number |
21890174
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
栄徳 勝光 高知大学, 教育研究部・医療学系, 助教 (50552733)
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Keywords | インジウム化合物 / 産業医学 / エピジェネティクス / 酸化ストレス / 呼吸器炎症 |
Research Abstract |
一昨年度にアカタラセミアマウスと野生型マウスを用いて酸化インジウム(In_20_3)の気管内投与を行い、体重増加の抑制、肺相対重量増加、肺組織の変化を調べたが、その際に採取した血清を用いてインジウム濃度を測定したところ、投与量の増加に伴い血清インジウム濃度(In-Se)が上昇したものの、アカタラセミアマウス、野生型マウスの間で有意な差は認められなかった。このことから、アカタラセミアマウスでより顕著に認められた肺組織の変化が、In-Seに依存せず遺伝子型の違いによるものであることが示された。アカタラセミアマウスはカタラーゼ活性が欠損しているが、野生型マウスと比べてIn_20_3による肺組織の損傷が生じやすい原因は、カタラーゼ活性の低下により活性酸素の除去能力が低下し、過剰に残った活性酸素が肺組織を損傷していると予想される。 フラットパネルディスプレイの材料であるIn_20_3の産業的価値は、世界のIn消費の大半を占める我が国において非常に高く、In_20_3曝露による健康障害発生直後からインジウム化合物の毒性評価、製造工場やリサイクル工場などの職域を中心とした疫学調査が並行してなされ、作業環境の許容濃度が設定されたものの、一方でまだ明らかにされていない低濃度曝露の影響を検討することも継続して取り組むべき課題として残されている。 In化合物の毒性研究において、今回遺伝子変異マウスを用いて、酸化ストレスと肺障害の関係性を示唆する結果が得られたことにより、これまでと異なる切り口から今後の研究の指針を示す重要な手がかりを得ることができたといえる。
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Research Products
(5 results)