2009 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮機能保持における内皮由来過分極因子による代償機構の検討
Project/Area Number |
21890233
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
後藤 健一 Kyushu Dental College, 歯学部, 助教 (30549887)
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Keywords | 内皮機能 / 内皮由来過分極因子 / 一酸化窒素 / 食塩感受性高血圧 |
Research Abstract |
6週齢の雄性Dahl食塩感受性ラットに、0.1%低食塩食または8%高食塩食を12週齢まで6週間負荷した。摘出腸間膜動脈リング標本において、等尺性収縮法を用いて、acetylcholine(ACh)による内皮由来過分極因子(EDHF)を介した内皮依存性弛緩反応、一酸化窒素(NO)を介した内皮依存性弛緩反応、levcromakalim(ATP感受性Kチャンネル開口薬)による内皮非依存性弛緩反応を検討した。6週間の食塩食負荷後、収縮期血圧は高食塩群で低食塩群に比し有意に上昇した。AChによる内皮依存性弛緩反応には群間で差を認めなかった。しかし、プロスタノイドとNOを阻害した条件下でのAChによるEDHFを介した内皮依存性弛緩反応は、高食塩群で低食塩群に比し有意に増強していた(最大弛緩;66±4vs.50±3%,;p<0.01;n=12-14)。一方、AChによるNOを介した内皮依存性弛緩反応は高食塩群で低食塩群に比し有意に減弱していた(最大弛緩;60±4vs.80±1%;p<0.001;n=8-9)。Levcromakalimによる内皮非依存性弛緩反応には群間で差を認めなかった。以上の結果より、Dahl食塩感受性ラットの腸間膜動脈では、高食塩負荷によりNOを介した弛緩反応が障害されるが、EDHFによる弛緩反応が代償的に亢進することで内皮機能が保持されていることが明らかとなった。本年度の研究より、食塩感受性高血圧病態下においては、EDHFが内皮機能障害の進展を抑制し、血管の恒常性維持に重要な役割をはたしている可能性が示唆された。この代償機構に破綻を来せば、内皮機能障害が更に進展し、心血管病のリスクを高めることが予測される。従って、NOを介する反応が障害される病態においてEDHF反応が代償的に亢進する機序を解明することは、心血管病予防・治療の観点から極めて重要と考えられる。
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