2009 Fiscal Year Annual Research Report
骨粗鬆症を標的とする組織特異的プロトンポンプATPase阻害薬の探索
Project/Area Number |
21890239
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
關谷 瑞樹 Iwate Medical University, 薬学部, 助教 (70509033)
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Keywords | 酵素 / プロトンATPase / V-ATPase / ATP合成酵素 / 阻害剤 |
Research Abstract |
本年度はプロトン輸送ATPaseの駆動機構を明らかにすることを目的にF-ATPaseをモテルとして一分子観察を中心とした解析を行った。F-ATPaseのF_1部分では、γサブユニットが触媒活性を持つβサブユニットと相互作用し、ATPの合成・分解と分子の回転を共役させている。本年度は、大腸菌F_1部分のγサブユニットの回転を観察し、熱力学的に解析した。さらに、γ-βサブユニット間の相互作用に重要な役割を果たしていると考えられるアミノ酸残基に変異を導入し、回転を観察した。 γサブユニットは120°のステップを示しながら回転し、各ステップの間で野生型は平均0.2ms停止した。停止している間にATPが加水分解され、120°回転している部分で生成物の解離とATPの結合が起きると考えられる。熱力学的には、野生型の回転は停止部分と回転部分がほぼ同じ活性化エネルギーを持つことを明らかにした。この結果により、F_1の各反応段階では遷移状態へ移行する際の活性化エネルギーが低く一定に保たれており、γサブユニットは効率的に回転していることが示唆された。 また、γサブユニットのMet23残基をLysに置換したF_1の回転は、野生型と比較して停止部分で活性化エネルギー、エンタルピー、エントロピーのいずれもが上昇した。さらに、第二の変異としてβサブユニットのGlu381をAspに置換すると、F_1の停止時間と回転速度は野生型と同等に回復した。すなわち、γMet23Lys変異により停止部分で遷移状態への移行を妨げる新たな結合がγ23LysとβE381の間で形成され、回転が阻害されたと推定された。したがって、γサブユニットの効率的な回転には、γ-βサブユニット間の適切な相互作用が重要と考えられる。研究成果はJournal of Biological Chemistry(2009,284,22401-22410)にて報告した。
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