2009 Fiscal Year Annual Research Report
がん微小環境における間質細胞・間葉系幹細胞による免疫抑制機構の解明と克服法の開発
Project/Area Number |
21890247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷口 智憲 Keio University, 医学部, 助教 (40424163)
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Keywords | 癌免疫療法 / 腫瘍免疫回避 / 間葉系幹細胞 / 線維芽細胞 / 腫瘍間質 |
Research Abstract |
本研究の目的は、がん組織の間質細胞、特に骨髄由来の間葉系幹細胞(MSC)が各種免疫細胞に対して及ぼす作用、また、がん細胞・免疫細胞・間質細胞の三者の相互作用を検討し、がん微小環境における免疫抑制の分子機構を解明する事、さらに間質細胞を標的とした免疫抑制の解除法を追究する事である。平成21年度は、がん微小環境中のMSCを解析するための良いマウスモデル構築を試みた。GFPマウスの骨髄をコラゲナーゼ処理しMSCをより多く回収した状態で野生型マウスに移植し、骨髄由来のMSC及び血球がGFPで標識されているマウスを作製した。このマウスに悪性黒色腫、肉腫、大腸癌など各種マウスの癌細胞株を皮下移植し、腫瘍が増大した時点で組織中のGFP陽性かつMSCマーカー陽性(PDGFRa,Sca1)細胞の割合をFACSにて測定した。その結果、大腸癌細胞株で腫瘍移植後2週間で最も多くの骨髄由来MSCが腫瘍中に遊走し、よいマウスモデルとなりうることが判明した。今後、この細胞株を用いて腫瘍中MSCを分離し機能解析を行う予定である。本年度は更に、ヒト腫瘍細胞が線維芽細胞に与える影響もin vitroにて評価した。ヒト膵臓癌細胞株の培養上清を含む培地でヒト線維芽細胞を培養し、線維芽細胞の産生する各種免疫抑制分子の発現変化を定量PCR法にて測定した。その結果、免疫抑制性サイトカインであるTGF-ssなどが上昇しており、がん微小環境下では線維芽細胞はより多くの免疫抑制分子を産生し腫瘍免疫逃避に関与している可能性が示唆された。更にこのin vitro実験モデルを用いてヒトMSCが腫瘍存在下でどのような変化を起こすかを解析する予定である。以上のように平成21年度の研究では腫瘍中のMSCの性質を解析するのに最適なモデルの検討を行い、条件を決定することができたので、平成22年度更に解析を進める事ができると考えられる。
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