2009 Fiscal Year Annual Research Report
ドパミン受容体を介した異常行動における統合的なエピジェネティクス解析
Project/Area Number |
21890281
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (Start-up)
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
位田 雅俊 Ritsumeikan University, 薬学部, 助教 (70512424)
|
Keywords | パーキンソン病 / ドパミン神経 / セロトニン神経 / 6-hydroxydopamine / フルオキセチン / L-dopa / リン酸化ヒストンH3 / 線条体 |
Research Abstract |
慢性進行性の神経変性疾患であるパーキンソン病(PD)には多くの治療薬が開発されている。その中でもPD治療薬の主流として、L-dopaが知られている。しかし、慢性的にL-dopaを服用すると約40%ものPD患者に精神症状や日内変動といった重度な副作用が生じる。この副作用は、ドパミン(dopamine, DA)神経系だけではなく、セロトニン神経系をはじめとする他の神経系の関与が考えられているが、その分子機序については不明である。そこで本研究では依然不明な点が数多く残されているPDにおけるセロトニン神経系との関与を調べた。6-hydroxydopamine(6-OHDA)投与ラットに選択的セロトニン神経毒である5,7-DHT(5,7-dihydroxytryptamine creatinine sulfate)を処置し、DA神経障害時おけるセロトニン神経系の関与について解析した。その結果、6-OHDA投与ラット(6-OHDA/PBS群)はL-dopa誘発旋回運動を示したが、5,7-DHTを投与した6-OHDA投与ラット(6-OHDA/5,7-DHT群)は旋回運動を示さなかった。また、6-OHDA/5,7-DHT群において、tryptophan hydroxylase陽性セロトニン神経細胞数や線条体でのSERTの免疫反応性が減少していた。このことから、6-OHDA/5,7-DHT群では、セロトニン神経内でL-dopaからDAの合成量が減少し、その旋回運動数が減少したと考えられる。また、PD患者に抗うつ薬として使用される選択的セロトニン再取り込み阻害薬の1つであるフルオキセチンを用い、その効果を行動薬理学的および生化学的に検討した。その結果、フルオキセチンを前投与した6-OHDA投与ラットのL-dopa誘発旋回運動は著しく減少した。また、フルオキセチンによりL-dopa処置によるphospho-p44/42MAPK、リン酸化ヒストンH3およびGAD67の増加が抑制されたが、これは、障害側線条体のセロトニン神経においてフルオキセチンによりL-dopaから合成・放出されるDA量が減少したため、D1受容体刺激が減少した結果であると考えられる。以上の結果より、DA神経障害時においてL-dopaの作用機序にはセロトニン神経系が非常に重要であること、またフルオキセチンは、DA神経障害時においてL-dopaの効果に影響を与えることが示唆された。
|
Research Products
(2 results)